◆【主張】中東情勢緊迫 日本らしい支援で貢献を (産経 06/7/14)
小泉純一郎首相がイスラエル、パレスチナを訪問している最中に、イスラエル軍が拉致された同国兵士2人の救出を目指して隣国レバノンに6年ぶりに侵攻した。
兵士1人の奪還を理由としたこれまでのパレスチナ・ガザ地区への侵攻に加え、イスラエル軍はこれで、南北での二正面戦闘に突入した。
イスラエルのオルメルト首相は、イスラム教シーア派組織ヒズボラによる兵士拉致は、「単なるテロではなく戦争行為だ」とレバノン政府を批判、ベイルート国際空港への空爆を含む大規模作戦に乗り出した。
この結果、ヒズボラと関係の深いシリアやイランを含むアラブ・イスラム諸国の反発も一気に高まり、中東情勢は再び緊迫した状況を迎えた。
こうした事態に、日本は一体何ができるだろうか。軍事衝突の拡大には双方に自制を呼びかける以外に手立てがない。
しかし、長期的な和平への環境作りは可能だ。欧米と連携を取りながら、日本ならではの役割を果たしていくことが大事である。
小泉首相は、オルメルト首相との会談で、地域の開発・発展を目指す「平和と繁栄の回廊」構想を示し、日本、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンによる4者協議機関の立ち上げを提案した。オルメルト首相は「日本らしい支援の一つだ」と歓迎した。
日本はパレスチナ暫定自治に関する1993年のオスロ合意以来、パレスチナの民生支援を継続し、すでに8億ドルを超える支援を行ってきた。
また、イスラエル、パレスチナ双方の代表を毎年日本に招き、信頼醸成のための合宿会合も主催している。中東紛争に歴史的なしがらみを持たない日本だからこそできる協力事業で、双方や米国から高い評価を得ている。
パレスチナのアッバス議長との会談でも小泉首相は、民生支援の継続の方針を伝え、それに先立つイスラエルでの記者会見では「欧米とは違う支援のやり方がある」と述べた。
中東和平は地域の安定、世界の平和に大きな意味を持つ。日本のエネルギー安定確保にも資する。中東情勢が不安定になればテロも激化する。
日本が引き続き、日本ならではの支援を続け、信頼を高めていくことの意味は小さくない。