◆産みたい育てたい 『家族の日』考(上) (東京 06/7/29)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060729/ftu_____kur_____000.shtml
少子化施策 後押し狙う
政府がまとめた少子化対策に盛り込まれた「家族の日」。来年度以降、「家族・地域の絆(きずな)を再生する国民運動」の一環として制定される予定だ。この「家族の日」について考えてみたい。
七月十六日の「伊豆三津(みと)シーパラダイス」(静岡県沼津市)。「うわーっ」。人気のシャチのショーで、六メートルを超える大きな体が勢いよく水中からジャンプすると、プールを囲む観客席から歓声が上がる。園内は終日、家族連れやカップルらでにぎわっていた。
静岡県は、毎月第三日曜日とその一週間を「家族ふれあいサンデー・ウイーク」と制定。十八歳未満の子どもを持つ家族が文化・レジャー施設で入館料割引などのサービスを受けられる「家庭の日」優待制度を実施している。
三年前、一九六六年に始めた「家庭の日」を見直し、「家族がコミュニケーションを深める機会を提供しよう」(県教委)と導入したのだ。
優待券は小中高校などで配布され、美術館や博物館、プール、ボウリング場など百二十二施設で利用できる。期間中は講演や親子コンサートも行われている。
「ふれあいサンデー」となった十六日。制度に協賛するシーパラダイスでも、入園料が大人で五百円割引の千三百円、子どもは二百円割引の七百五十円となる優待券持参の家族連れが訪れていた。
シーパラダイスで聞くと、優待制度には賛否両論があった。「券をもらえば家族で出かける気になる」と話すのは、二人の子を連れた母親(35)。親子四人で来ていた母親(33)も「優待券が付いたリーフレットには、行ったことのない施設が載っているので、行くきっかけになりますよ」。
一方、男児(3つ)の世話をしていた父親(33)は「券がなくても、年三回は家族で行楽に出かける。家族の時間を持つのに必要なのは、券より心とお金の余裕でしょうね」。
政府が六月にまとめた「新しい少子化対策」は、経済支援や働き方の見直しなど四十項目に及ぶ。
その一つに、「各種施策がより大きな効果をあげる上で重要なのは、家族の絆や地域の絆を強化すること」として盛り込まれたのが、「家族・地域の絆を再生する国民運動」の推進だ。
具体的には、家族で団らんしたり、町内会の行事に参加したりするための「家族の日」や「家族の週間」の制定を挙げ、さらに国や地方公共団体による行事も開催するとしている。
「家族・地域の絆再生」政務官会議プロジェクトチームの独自の提案が、反映された。
内閣府少子化対策特命室の増田雅暢参事官は「すでに家庭の日を設けている県や市は多い。上乗せする形で実施できれば、と考えている」と説明する。
「家庭の日」事業を推進する社団法人青少年育成国民会議によると、「家庭の日」が始まったのは六三年。
高度成長期、都会に働きに出る人が増える中、秋田県や鹿児島県が「家を離れている家族に手紙を出しましょう」と、出稼ぎ労働者と家族をつなぐ目的で設けた。
三年後に同会議ができると、「親子関係を良好にする機会に」と、青少年の健全育成を目的に全国運動を展開。各県でハイキングや地域美化活動、各種イベントをしてきたが、最近は家族が団らんの時を持つことを重視する内容が増えている。
東京都は昨春から毎月第三土曜、日曜を「家族ふれあいの日」として、レストランや文化・レジャー施設で使える優待券を配布。
名古屋市でも、ホームページから印刷できる優待券を持参すれば、レストランで飲み物無料などのサービスが受けられる。
だが一方で、政府が「家族の日」を少子化対策関連の国民運動として提唱することには、少子化を家族内の問題に帰結させるおそれもないか。次回(下)(八月一日掲載予定)では、提唱する意味や狙いのほか、どうとらえたらいいのかなどを識者らに聞く。

