◆「分祀できない理由」靖国神社幹部語る (TBS 06/8/8)
http://news.tbs.co.jp/part_news/part_news3352975.html
終戦記念日の8月15日まで丁度一週間。小泉総理が靖国神社を参拝するかどうか注目が集まる中、自民党内からは秋の総裁選を睨み、靖国問題の様々な打開策が打ち出されています。こうした中、「A級戦犯分祀ができない理由」を靖国神社の幹部が語りました。
昭和天皇がA級戦犯の靖国神社合祀に不快感を示したとされる「富田メモ」に衝撃が走る中、靖国神社で緊急総代会が開かれました。
「(A級戦犯合祀は)松平宮司(当時)が独断で決めたと言われるが全くの間違い」(靖国神社総代 小田村四郎 元拓殖大総長)
総代の1人、小田村氏は今回の緊急総代会でこのように述べ、「世間に分かるよう説明すべきだ」と主張しましたが、神社側は、合祀に至る経緯を改めて示すにとどまりました。
「分祀すべき問題を誰がどうやって選ぶのか、ということだと思います。もし(合祀対象として)東京裁判のいわゆるA級戦犯を認めるならば、東京裁判を認めるのかということになります。東京裁判は絶対認められない」(靖国神社総代 小田村四郎 元拓殖大総長)
総代会では、なぜ分祀ができないのか、一般的には分かりにくいという意見も出ましたが、結局、分祀は不可能という神社の方針が確認されて終了しました。
「遺族会も勇気を持ってそうした問題に真正面から取り組んでいくと」(日本遺族会・会長 古賀 誠 元自民党幹事長)
日本遺族会・会長の古賀氏も、2カ月前までは総代の1人でした。古賀氏は父親の顔すら覚えていない、いわゆる「赤紙遺児」。古賀氏は自らの経験から一部英霊の分祀案を提案。自ら総代を辞任したのです。しかし・・・。
「基本的に間違っている。出発点が間違っている」(靖国神社総代 山本卓眞 富士通名誉会長)
旧満州で特攻隊として出撃直前に終戦を迎えた山本氏は、戦争に行かせた側と行かされた側という考え方そのものが、戦後教育の誤りだと主張します。
「敗戦によって国のために命を捨てるという崇高な行為が、すっかりおとしめられている。古賀さんもそういう環境の中で育った」(靖国神社総代 山本卓眞 富士通名誉会長)
古賀氏と同世代の所氏も父親を幼い頃に亡くしました。
「従来の戦没者の慰霊は名前のはっきりした(家族・友人など)“顔の見える人”の慰霊であったと思います。これからは(名前を超えた)まとまった形の“英霊”を大事に考えていくんだということになっていくだろうと思います」(靖国神社総代 所 功 京都産業大教授)
遺児の世代で最も若い60代の政治家は、靖国問題解決に向けて様々な方法を模索しています。
「靖国神社のあり方について考えなくてはいけない時期にきているのではと」(麻生太郎 外相)
そして8日、ポスト小泉候補の1人である麻生外務大臣が独自案を公表しました。靖国神社が自発的に宗教法人を解散し、財団法人に移行する。慰霊の対象は国会の論議で決めるべきだとしています。
「私は当面(首相参拝は)差し控えるべきではないかと」(谷垣禎一 財務相)
同じくポスト小泉の1人、谷垣氏は地元・京都の遺族会会長でもありますが、国際関係に配慮して参拝自粛を打ち出し、総裁選でその是非を問う考えです。
「私が(靖国参拝に)行ったか行かなかったか、あるいは行く行かないについて、申し上げることは差し控えたい」(安倍晋三 官房長官)
安倍氏は総裁選が本格化する前、今年4月、既に靖国神社を参拝していました。安倍氏は、事実関係すら認めず、争点になるのを避けています。
「A級戦犯分祀案も結構ですし、国立追悼施設案もいいんではないかと思います」(自民党 山崎 拓 前副総裁)
「僕は国をあげて議論していいと思います。これは皆で総括・議論すべきではないか」(自民党 加藤紘一 元幹事長)
世論調査では、「A級戦犯分祀に賛成」「次の総理大臣は、靖国参拝を中止すべき」と考える人が過半数を占めています。政治が今後、どうこの問題に向かい合っていくのか、その力量が問われています。