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◆【正論】作家・深田祐介 指導者の条件とは「狎れ」を恥じること (産経 06/8/12)


作家・深田祐介の「正論」(撮影・矢島康弘)


■『特攻とは何か』から知り得た感慨

 ≪1回限りの作戦だったが≫

 森史朗氏の近著『特攻とは何か』(文春新書)は、戦争ノンフィクションとしては出色の完成度を示す秀作である。

 「決死」ならぬ「必死」の神風特別攻撃隊の発案者であり、実行者である海軍中将、大西瀧治郎を描いて間然するところがない。

 戦時下の日本の国家観にきわめて忠実であり、強いリーダーシップを示すが、この「統率の外道」たる特攻が、やがて日本の戦争の大義を汚し、亡国の危機に導きかねなかった人物を文字通り活写する。

 そして現代の「指導者の条件」に強い示唆を与える。

 当初、大西中将は特攻を「捷1号作戦」発動に伴い、栗田艦隊のレイテ突入に呼応すべき、1回限りの奇襲策と考え、決断したのだった。

 しかし、1回限りのはずだった特攻の敷島隊が、巨艦「大和」以下の栗田艦隊を上回る戦果を挙げたことから、特攻作戦の継続、拡大に走る。

 大西中将は口癖のごとく、「特攻に狎(な)れてはいけない」と繰り返し語っていた、と作中にある。

 その意中を森氏は「特攻が日常化すると、命ずる方はそれを単に事務として処理しがちで、命じられる方の心理や不安、心の葛藤(かっとう)や恐怖心、そして何よりも彼らの献身や犠牲の大事さを忘れがちになる」ことを自戒しての発言と説明している。

 しかし実態は、陸海軍とも初期戦果に目を奪われ、たちまち「特攻に狎れてしまう」のだ。

 特攻の戦果報告を信じない司令が現れ、エースパイロットが憤慨してピストルを放ったり、まったく効果の期待できぬ昼間銃撃特攻などといういい加減な命令を乱発、日本の戦争は堕落するのである。

 1回限定のはずの作戦が全軍特攻へと拡大し、狂気の自殺攻撃兵器を生み出し、全軍特攻から全国民特攻へと暗黒の道をたどることになり、行く手に日本民族そのものの玉砕による滅亡が予感されてくるのだ。


 ≪幼いわが娘にあてた遺書≫

 私は終戦時、14歳の中学2年生であったが、特攻作戦開始とともに、日本の世間の暗さが一挙に深まり、全国民玉砕の絶望感が国を覆ったことを改めて想起するのである。

 私は疎開先の相模湾を見下ろす高台の家で、いや増す恐怖と不安にふるえていたのであった。

 相模湾を臨むがゆえに、私の家の庭先には陸軍の15センチ榴弾砲が据えられ、高台の下の台地は洞窟(どうくつ)戦に備えて、縦横にトンネルが掘られ、本土決戦、つまり米軍の相模湾上陸に備える工事が進行していた。当然ながら、硫黄島から来襲する米戦闘機P51の好目標となり、連日、機銃掃射に見舞われた。

 私はすでに近眼であったから、航空機や特攻ボートへの乗り組みは考えられず、この高台の上で艦砲射撃に粉砕されるか、下の洞窟で火炎放射器に焼かれるか、という暗い予感におののいていた。

 私は「大東亜共栄圏の建設」やアジア植民地の解放に戦争の意味を感じ、この理想に憧憬を抱いていたが、陸海軍指導者の「特攻依存」「全国民特攻」の発想は「外道」どころか退廃と感じられ、子供心に戦争の大義を汚すものに思われたのである。

 森氏作品で、「哀切きわまりない」として紹介される立教大学出身、サッカー部主将の植村真久予備少尉の生後6カ月のまな娘、泰子さんにあてた遺書は、激しい愛情に満ちた名文だが、この哀切さを理解できぬところに「堕落」があったのである。


 ≪昔は特攻で、今金融界か≫

 江戸時代の藩校では「財利の咄(はなし)、価の高下咄すべからず」と教えたが、現代日本の金融界は特攻ならぬ、「金転がし」に狎れてしまった。

 以前に共訳した華僑の家訓に「人に目立たぬように隠れ住み、常に逃亡用の旅行カバンを身辺に置け」とあったのが印象に残るが、金融界に巣くう無頼の徒は山上の豪邸に傲然(ごうぜん)と暮らし、卑屈に総裁にこだわり、恬(てん)として恥じないという実態は華僑に劣る。

 彼らには中小企業経営者がわずかな金策に苦しみ、年間3万人以上の自殺者を生み出している日本の世間が見えないのだ。特攻指導者に勝る堕落ぶりと申すべきか。

 靖国参拝にしても、あれは国事殉難者の霊所であるのが見えなくなり、総理の参拝中止を唱えたりする認識欠如の経営者が現れたりするのだ。

 ともあれ、大西瀧治郎は特攻当事者の痛みは熟知しており、終戦決定の深夜に割腹自殺した。

 リクルート以上といわれる金融事件に絡んだ経営者諸氏は、未練いっぱいになお生き続けるのか。
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by sakura4987 | 2006-08-12 15:15

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