◆中国 汚れる大地 廃棄物80億トン “クロムゴミ”500万トン (産経 06/8/29)
中国の土壌汚染は都市部だけで13・4万ヘクタールにも広がり、積もり積もった廃棄物は80億トン近くに達していることが全国人民代表大会(全人代=国会に相当)常務委員会会議の報告で分かった。
汚染面積は日本の成田空港の約126倍。さらに猛毒の六価クロムなど“クロムゴミ”が500万トン以上も含まれ、健康被害の危険性が警告された。全国の農地も10%が汚染されているといわれ、8億人の農民を抱える中国の未来は危ない。
報告によると、昨年、再利用も処理もされずに捨てられた工業廃棄物は13・4億トン。2000年より64%も増えた。廃棄物堆積(たいせき)量は80億トン近くにのぼる。
特に危険性が高いのが、メッキに使われるクロムのうち猛毒の六価クロム。触れると皮膚炎、潰瘍(かいよう)を起こし、体内に入れば肝臓障害、貧血、肺がんなどの原因になる。ダイオキシンに並ぶ有毒物質だ。
三峡ダム、黄河、湘江といった主要水源の近くでクロム汚染が進み、流域でがん発症率が異常に高い農村が点在するなど、クロム汚染とがん発症との因果関係が深刻な注目を集めている。
中国政府は03年ごろからクロム汚染に目を光らせ、昨年ようやくクロムゴミの総合処理計画を発表した。
しかし、「クロムゴミを3000トンと報告したある地方政府を調査すると10万トン以上も見つかった」事例が会議で報告されるなど、地方政府が汚染実態を隠蔽(いんぺい)するケースが後を絶たない。
今回の報告では主に都市部が調査対象となったが、農村の生活ゴミ、人や家畜の排泄(はいせつ)物、工業廃棄物、建設ゴミ、医療ゴミ、化学肥料、農薬の使いすぎによる深刻な土壌汚染も指摘された。
環境保護総局の統計によると、水質汚染により土壌が汚された農地は217万ヘクタールにおよび、年間1200万トンの穀物が重金属に汚染されている。
農地汚染は全体で1000万ヘクタールともいわれる。
中国では、土壌・大気汚染が地下水・地表水汚染を引き起こし、さらに土壌汚染を拡大させる複合汚染構造が指摘されており、中途半端な防止対策では効き目がない。
2000~2005年に国内総生産(GDP)の1・3%が環境汚染対策につぎ込まれたが、この5年で二酸化硫黄の排出量は27%も増えた。
環境保護総局は次の5年間でGDPの1・5%(1・4兆元=約20兆円)が必要と当て込むが、「(予算措置の)めどはまだついていない」(盛華仁・全人代常務委副委員長)のが実情だ。