◆露、大統領選へメディア支配着々 甘い汁「政商」暗躍 (産経 06/9/2)
ロシアで独立系有力紙が親プーチン政権といわれる企業家の手に落ちたことで、政権による主要メディアの支配が一段と際立ってきた。2008年春の大統領選挙に向け、カギを握るメディアへの統制強化が着々と進む一方、政権に密着して甘い汁を吸う政商たちの暗躍ぶりも目立っている。
「親プーチン政権の政商が経営権を握るのだから、編集方針も大きく変わるだろう」「選挙が近くなれば、もっと高い値段で新聞の経営権を政府に売って大もうけするつもりさ」
ロシアで数少ない独立系経済紙・コメルサントが親政権派の大富豪ウスマノフ氏の手に落ちたことで、同編集部では8月31日、さまざまな憶測が飛び交い今後への不安が広がった。政権のメディア支配が進む同国ではもう珍しくなくなった光景だ。
同紙の経営権をめぐっては、ウスマノフ氏のほか、アルミ王のデリパスカ氏や鉄道王のヤクーニン氏、石油で財を成しチュコト自治管区知事を務めるアブラモビッチ氏、ポターニン元第1副首相ら「政商」たちが競ったとも伝えられる。
日刊紙だけでなく、週刊誌や月刊誌なども発刊する同紙の純益は年間1500万ドル(約17億5000万円)とされる。この時期に経営権が移るのは「政治的な理由しか考えられない」というのが一般的な見方だ。
独立系メディアの中心的存在だったイズベスチヤ紙も昨年6月、国営天然ガス独占企業体ガスプロムの子会社であるメディアグループ「ガスプロムメディア」に買収され、政権傘下の国有メディアとなった。
民間団体、グラスノスチ(情報公開)保護基金の監視部門代表、ティモシェンコ氏は、「イズベスチヤ紙を含め、親政権派の経営者の手に渡った新聞はいずれも政権批判を抑える一方で、話題や流行など政治とは無関係な記事を多く載せる編集方針を採用する。
体裁もタブロイド判を多用し、商業化を進めている。政府とは独立した視点で批判を展開するメディアは今では数えるほどだ」と指摘、政権の圧力に屈するメディアの動向に危機感を募らせている。
◇
【政権に支配される露主要メディア】
■親政府系
・イズベスチヤ(ガスプロムメディア)
・コメルサント(ウスマノフ)
・ノーブイエ・イズベスチヤ(ミトボリ環境保護庁副長官)
・コムソモーリスカヤ・プラウダ(ガスプロムメディア)
・ロシア新聞(ロシア政府)
・ノーバヤ・ガゼータ(レベジェフ下院議員)
・独立新聞(レムチュコフ経済発展貿易相補佐官)
・全テレビ局、主要ラジオ局
■独立系
・ベドモスチ(インディペンデント・メディア)
・ガゼータ(言論の自由支援基金)
※()内は、中心的経営者