◆中央アジア非核地帯 大国に「拒む権利」ない (中国 06/9/17)
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200609170111.html
旧ソ連から独立した中央アジア五カ国が「非核地帯条約」に調印した。ところが、米国が異議を唱え、実質的な効力を発揮できない恐れが強まってきた。核超大国のエゴとしか言いようがない。
調印したのはカザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン。周囲にロシア、中国、インド、パキスタン、イランなどの核保有国や核疑惑国が並び、核兵器の脅威にさらされている国々である。
それだけに、この条約は核兵器の製造、入手、配備など一切を禁止し、平和な地域を築きたいとの切実な願いが込められている。しかも、カザフスタンには旧ソ連のセミパラチンスク核実験場があった。今も多くの市民が核被害に苦しんでいるだけに、人類の尊厳を守る宣言のようにも思える。
問題は、核保有国の思惑次第で条約が骨抜きになりかねないことだ。条約の付属議定書で核保有国に対し、域内への核攻撃や核による威嚇をしないよう求めている。しかし、米国は「われわれの懸念が解消されない限り、議定書には署名できない」と言い始めた。
どんな「懸念」があるのか、米国は明らかにしていないが、有事の際には五カ国がロシアの核配備を許すのではないかと勘ぐっている、との見方もある。五カ国側は丁寧に説明して不信感を打ち消し、条約の実効性を強める必要がある。
さらに事態を複雑にしているのが、中央アジアへの米軍駐留である。ブッシュ政権はアフガニスタンへの攻撃を契機にキルギスなどに軍事基地を置き、「テロとの戦い」の拠点にしている。非核地帯創設を認めると、核兵器持ち込みが不可能になるので、フリーハンドを確保しておきたい―。そんな思惑も透けて見える。
核五大国のうち、ロシアと中国は条約支持を表明したが、英国とフランスも異議を唱えているとされる。独立国の非核の意思を尊重しないのは、大国のおごりではないか。どう考えても、おかしい。
条約化された非核地帯としては六番目になる。一九九八年の交渉開始から八年。一時、ロシアと中国も反対し、何度も足踏みした。やっと実現したのは、国連が条約案の起草を支援し続けたからだ。
日本も札幌市で関係国会議を開くなど、全面支援してきた。米国、英国、フランスに議定書署名を迫り、非核地帯をもっと広げることが被爆国の責務である。