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◆【正論】筑波大学名誉教授・村上和雄 1万個の実をつけるトマトの教え


 (産経 06/9/24)

筑波大学名誉教授・村上和雄氏

 ■無限の可能性の先にある最適値

 《土が成長をコントロール》

 わずか1粒の種から1万個以上もの実を付けたトマトの巨木がある。遺伝子組み換えなどの新しい技術により、このようなトマトができたのかと想像されるかもしれないが、そうではない。

 このトマトは、1本の根幹から何千もの枝が分かれて、トマトの実を結ぶ。最も多いときで、1万個以上が実るというから確かにすごい。その秘密は、太陽の光と、水と空気の恵みを充分に受けて土なしで育てるところにある。水中の養分を補えば、根の部分は水中に浸しておくだけで栽培できるのである。

 つまり、植物がその成長能力を最大限に発揮する上で、土は不要ということなのだ。むしろ、土に根を生やしているがために、潜在的な成長能力は一定に押さえられている。1万個も実をつけるトマトは、実際、土とは無縁である。これが、植物の成長にとって理想的な環境だというのである。

 将来、人類が地球を出て、宇宙で生活するためには、このような栽培法が、どうしても必要となる。この巨大なトマトの木は、生き物にはまだまだ私たちの知らない、無限とも言える可能性を秘めていることを、見事に示した。

 一方、科学の用語のひとつに、「最適規模・最適値」という言葉がある。ある環境の中の最適な数や量のことで、自然界は、非常にうまくこの最適規模を守っている。

 たとえば、動物は、置かれた環境の中で数が増えすぎると、その後、逆に減っていく。食べ物が足りなくなったり、ストレスが過度にたまり過ぎたりして、集団としての維持が不可能になっていくのである。自然界の生物は、みなそれぞれに最適値を持っている。


 《自然の連鎖断たれる問題》

 この観点からすると、植物にとって、1粒の種から1万個も実をつけるのは本当に良いことなのか。

 個別にその植物だけを取り出して考えると、問題は解きほぐせない。大地、植物、光、水、大気という自然界全体の成り立ちを視野におさめて、初めてひとつの答えが導き出される。

 植物は、大地に根を生やし、成長して実をつける。その樹液や花のみつ、木の実などを食べて生きる虫や小動物がいる。それを食べる動物もいる。死んだ動物は土にもどり、微生物によって分解され、植物の養分となる。こうして巧みな循環がなされているからこそ、自然界は過不足なく成り立つのであって、何処かの連鎖が断たれると、問題が生じる。

 木を切りすぎると動物もいなくなり、大地は枯渇して砂漠化する。1粒の種だけが無際限に繁殖すると、全体が危機に瀕(ひん)する。

 このように見てくると、普通のトマトが、1粒の種から1万個も実をつけないのは、土によって本来の成長能力をじゃまされているのではなく、生態系全体の中での適正な成長規模を守っているからだとも考えられよう。

 遺伝子情報としては、1万個を実らせる能力を書き込まれているのだろうが、ぎりぎりまで発現させることは通常ないのである。

 複雑な生命体は、私たちの想像を超える潜在能力を持っているとみてよい。しかし、生物相互のかかわり合い、生物と自然とのかかわり合いの中で、能力の発現は一定に保たれる。つまり、生態系という高いレベルの有機的な秩序が保たれていくために、最適値がある。

 この生物の中に人類も含まれる。科学・技術を発達させ、際限なく生産の拡大を図るだけでは、人類はいつか行き詰まる。そして、次の世代に大きな負の遺産を残すことになる。


 《解決に必要な人間の慎み》

 人間は、限度を超えて物が増えた分だけ、心が貧しくなり、寂しくなっていくのではないか。それを解決するには、人間の慎みが必要である。

 先ごろ、ノーベル平和賞を受賞したケニアの女性環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが、日本語の「もったいない」をエコロジーの言葉「モッタイナイ」として世界に紹介したように、「慎み」も新時代の人間の生き方を表す世界の共通語「ツツシミ」となるよう広く伝えていきたいものである。

 「モッタイナイ」は単に物を節約することではないし、「ツツシミ」は欲望を消極的に抑えることではないだろう。この言葉の背後には、人類を含めた生物が、大自然の偉大な力「サムシング・グレート」により生かされているということに対する感謝の気持ちが込められている。
by sakura4987 | 2006-09-24 07:37

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