◆貨物検査には制約 海自「船舶」海保「立ち入り」 (産経 06/10/16)
海上での船舶に対する検査を意味する「臨検」と「船舶検査」という用語は、国際的にはかなり広い意味を含む概念である。だが、日本では憲法や法律上の制約があるため、船舶に対する検査を「戦時臨検」「平時臨検」「船舶検査」と、明確に3つに分けてとらえている。
このうち、戦時臨検は、戦時に軍艦が敵船を拿捕(だほ)したり積み荷の禁制品を没収したりするために実施するもの。命令に従わない船舶を撃沈する場合もある。政府は、戦時臨検は憲法上禁じられている交戦権の行使だと解釈しており、日本は実施できないという立場だ。
これに対して、平時臨検は、戦争状態ではない平時に警察権の行使として認められている措置で、海賊や奴隷貿易などをする船舶に対して行うもの。日本では、海上自衛隊ではなく、主に海上保安庁が海上保安庁法に基づく「立入検査」として実施するが、公海上での強制力には限界がある。
一方、船舶検査は、海上保安庁ではなく海上自衛隊が周辺事態法に基づいて実施する。航行船舶の停船を要請し、船長の承諾を得て、積み荷などの検査を行うもの。これも、あくまでも相手方の承諾が必要で、強制力はない。
いずれにしても、日本の臨検、船舶検査へのかかわり方は、国内法の未整備によりきわめて限定されている。このため、各国と歩調を合わせられないのが現状だ。