◆モノ食う場所をわきまえよ (産経 06/10/31)
「腹が減っては戦(いくさ)ができぬ」とは言うものの、場所を構わず食べていいわけがない。通勤電車の中で飲み食いする輩(やから)が年々増えている。
初めて目撃したのは、缶やペットボトルの飲料といっしょに、菓子パンやジャンクフードを食べるティーンエージャーだった。
食べカスをボロボロこぼすのも迷惑だが、電車が急停車したときに、飲み物が隣の乗客にかかったらどうするのか。その行儀の悪さに、「ガキどもが、家に着くまで我慢できないのか」と睨み付けたものだ。
そんな若者を見るにつけ、「親の顔が見たい」と思っていたが、近頃は、いい年をした社会人が車内で堂々と物を食べているではないか。おにぎりを頬張るサラリーマン。チョコレートやクッキーを食べるOL。イカの薫製をつまみながら缶酎ハイを飲むオヤジ。
先日はもっと凄い奴を目撃した。コンビニで買ったトロロ蕎麦(そば)をすすっていたのだ。
私は目が点になり、ズルズルと音を立てて食べ続ける男を唖然として見ていた。食べるにことかいてトロロ蕎麦とはいい度胸だ。どんな人生観を持っているのか、差しで話をしてみたいとさえ思った。
トロロ蕎麦の音も不快だが、においのきつい食べ物も迷惑だ。ファストフード店の安い油で揚げたフライドポテトやチキンのにおいをかぐと、私は吐き気を催す。映画館や劇場で食べられると逃げ場がなくて困る。ファストフードで若者の嗅覚と味覚はバカになった。
空腹だから食べたい物をすぐ食べる。これでは動物と同じだ。人間なら公共の場所で周囲の迷惑を考えろと言いたい。