◆移民への対応に変化 (世界日報 06/10/30)
ルール押し付けで問題解決せず フランス
フランスの暴動は世界的にすっかり有名になり、多くの人々が、フランスでアフリカ系移民の若者が車に放火したり、通行人を襲撃したりしていることを知るようになった。
花の都パリとは、程遠いイメージだが、実際、毎日のように傷害や窃盗事件が起きている移民貧困地区が大都市郊外に広がっている。
アフリカ系移民の多いパリ南郊外ビルジュイフに住む友人のアパートを訪ねた時のこと。アパートから、車が炎上して、黒煙を上げているのを目撃した。友人は、早速警察に電話し「車が燃えていますよ」と伝えた。友人は「この辺は、それほど危険じゃないけど、時々、あるんだよね」と軽く言った。
十数分後、パトカー二台と消防車一台が到着した。ちょうど、その時、近くにいた若者数人が、他のもう一台の駐車中の車に火を付けようとしていた。それを目撃した警察官数人が、ものすごい勢いで追いかけていき、一人を捕まえた。ところが、それから展開された光景に驚いた。
数人の警官が一人の抵抗する若者を取り押さえようと格闘している間に、一時は逃げていた十人以上の若者が棍棒(こんぼう)などを持って、警官に襲い掛かったのだ。その格闘シーンは、アメリカ映画を見ているようでもあったが、もっと驚いたことは、若者たちが警察官を全く恐れていなかったことだ。
このような光景を長年見続けてきて、移民に嫌悪感を抱いていたフランス人の感情も大きく変化しているといわれる。「数年前までは、彼らにルール(法律)があることを教えるべきだと皆が思っていたのが、今では、ルールの押し付けだけでは問題は解決しないと考える人が増えている」とビルジュイフの友人は解説する。(パリ・安倍雅信)
◆暴力行為は凶悪化の一途
仏内相、治安確保に躍起
フランスの大規模暴動から一年を機に再燃の兆しを見せている若者の暴力行為が一部地方都市にも波及、犯行は組織化、凶悪化の一途をたどっている。サルコジ内相はバス放火の多発を受け、「公共交通の安全確保に警察を大量動員する」などとし、治安確保に躍起となっている。
仏ではこの一週間に、パリ周辺のイルドフランス地域を中心に七台の公共バスが放火された。二十八日には南部のマルセイユでもバス放火事件が発生、犯行は地方にも及びつつある。
また、今年の特徴は警察官を待ち伏せして襲撃したり、警察署など治安関係の建物に投石したり、行動が組織化している点だ。
二十八日にもパリ郊外グリニーで、覆面をした数十人の若者に火炎瓶や石を投げ付けられて警察官三人が負傷した。