◆【社説】大統領府に果たしてスパイ勢力の浸透はなかったのか (朝鮮日報 06/11/02)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/11/02/20061102000014.html
いわゆる「386スパイ(386世代とは1990年代に30歳代で80年代に大学に通った60年代生まれの世代を指す)」による「一心会事件」に関し、国民の最大の関心事、および心配事は、このスパイ組織のコネクションが、どれくらい奥深くまで浸透していたのかということだ。
それは単刀直入に言うと、権力の中枢、つまり大統領府にスパイ勢力が浸透していなかったかどうかという疑念だ。今回のスパイ捜査は最終的にこの部分に行き着くしかない。
現在行われているスパイ捜査の結果次第で、大統領府内部の386勢力の潔白が明らかになる可能性もあり、また潜伏スパイや協力者が摘発される可能性もある。だが、いずれにしても当局は国民を納得させられるだけの信頼性のある調査結果を提示しなければならない。
そうした結果が得られない場合、今回のスパイ捜査は真の終結を迎えることはできない。
一心会を率いてきたチャン・ミンホ容疑者は、これまでに摘発された国外在住者出身のスパイ容疑者とは格が違う。
チャン・ミンホは1993年に朝鮮労働党に入党し、その直後に韓国に入国して通商産業部傘下の韓国情報技術院で課長を務め、人脈を広げた。そしてゲームテレビ会社の代表などを務めながらIT業界で新進事業家としての足場を固めた。
金大中(キム・デジュン)政権下で当時の与党幹部が2000年の総選挙に備えて作成した勧誘対象リスト「将来が期待される300人」にも名前が上がっていたほどだ。
さらにチャン・ミンホは昨年、地上波テレビ局の2大株主が出資した子会社の社長に就任した。この時点で、チャン・ミンホはもはや大韓民国のあらゆる要人に接触できるだけの地位と活動範囲を確保したことになる。
こうした状況を考慮すると、同年代の元386活動家たちがチャン・ミンホの周りに集まり、その一部が組織に引き込まれたのもそれほど不思議ではない。
北朝鮮はチャン・ミンホに対し、韓国の北朝鮮政策・対米政策の動向、野党大統領候補の動向、主要政党の動向などを把握し、その都度報告するよう命じていた。
これほどの社会的地位を獲得し、北朝鮮からの指令を忠実に遂行してきたチャン・ミンホが、政界の周縁に位置する民主労働党にのみ触手を伸ばしていたとは考えにくい。
チャン・ミンホの最終目的が、大韓民国のすべての情報が集まる大統領府だったであろうことは、現在の大統領府で情報を統括する人々の多くが386世代であり、配下の同世代の元活動家を通じて彼らに接触を試みることのできる立場にあったことからも、容易に想像できる。
それだけに、386スパイ事件の最大の山は大統領府に関する捜査とならざるを得ない。
そうした重い任務を控えた状況で、国家情報院のトップが辞任し、代わりに金萬福(キム・マンボク))国家情報院第1次長が就任する。金次期院長が、この事件の捜査を指揮する上で適任者かどうかについては、疑問を差し挟まざるを得ない。
常識的に考えて、今後の捜査の展開は次期院長の意向によって決まる。しかし、金昇圭(キム・スンギュ)現院長は公式発言の中で、金次期院長を自身の後任としてふさわしくない人物と考えていることを示唆していた。
また今回の人事をめぐっては、金萬福次期院長とイ・ジョンソク統一部長官との間の特別な関係や、大統領府の386勢力とのコネクションといった「身内関係」が取りざたされている。そのため国民の多くが、金次期院長就任後のスパイ捜査の成り行きを懸念しているのは紛れもない事実だ。
金萬福次期院長は自身の判断が、後世にどう評価されるかをよく考えた上で、任務にあたらねばならない。