◆インドも月着陸目指す 2020年めどに有人探査へ 宇宙研究機関 (フジサンケイ 06/11/07)
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200611070031a.nwc
インド宇宙研究機関(ISRO)は6日までに、初の有人宇宙飛行を2014年前後に実施し、20年をめどに月面有人探査を実現させる計画案を明らかにした。
地元紙によると、ISROは政府系研究機関の科学者合同会議に同案を提示し、計画の是非や実現可能性に関する議論を開始。連邦政府の承認を得られれば、07年前半にカプセル打ち上げと着水・回収実験が始まる見通し。
ISROトップのナイアール会長がヒンドゥスタン・タイムズ紙に語ったところでは、有人宇宙飛行は国産のGSLVロケットでインド人飛行士1人の乗ったカプセルを打ち上げ、周回軌道上に1週間とどまる。月面探査は打ち上げから帰還まで15~30日間。
両計画とも国産技術のみでの実現を目指す。同会長は「技術は実現可能な範囲内にある」と述べ、「宇宙開発競争で後れを取ることはできない。インドは第一線にいなければならない」と意欲を示した。
宇宙開発の国際競争が激化する中、中国は既に有人宇宙飛行に成功。インドは07年末か08年前半に初の無人月探査衛星「チャンドラヤーン1号」を打ち上げる計画だ。(バンガロール 時事)
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≪「宇宙大国」へ開発着々 関連ビジネス拡大も視野≫
インドが宇宙開発分野での主導権争いに名乗りを上げた。国威発揚とともに、宇宙関連ビジネスの拡大をも視野に入れた戦略とみられる。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、「インドは着実に宇宙開発を進めており“宇宙大国”になりつつある」。宇宙開発の国際競争では、米露の2大国を追う欧州や日本、中国などの2番手グループに続く技術を備えつつある。
インドが宇宙開発に手を染めたのは1960年代初頭。69年に発足したISROは、宇宙開発の中心的な役割を果たしている。JAXAによると、インドはすでに24の宇宙機関と技術協力のMOU(了解覚書)を締結するなど幅広い協力関係を構築。中でも米国との協力関係は親密だ。
インドにとって宇宙技術を引き上げることには数多くの利点がある。通信、気象、災害監視、教育のほか、将来的に軍事面への転用を見据えたものとみられるが、宇宙ビジネス分野でもインドの存在感は高まりそうだ。
地表付近の情報を収集するリモートセンシングで国際的市場開拓などを行うため宇宙省の商業部門として「アントリックス」を設立。同社は宇宙通信システムやリモートセンシングのソフトウエアなどを開発、ロケット発射などを行っている。
長期的に、月面有人探査などの実績をてこに、海外からのロケット打ち上げの受託などを他の宇宙大国と競う計画とみられる。