◆政府、集団的自衛権の具体的な研究進まず (産経 06/11/10)
安倍晋三首相は、政府見解で「保有しているが行使は許されない」とされる集団的自衛権について、政府として研究する意向だが、まだ具体的な動きにはなっていない。
ただ、北朝鮮による弾道ミサイル発射や核実験という急激な東アジア情勢の変化を踏まえ、議論は活発化している。
北朝鮮の核実験に対する国連安保理による制裁決議に「貨物検査」が盛り込まれたのを受け、政府は周辺事態認定に基づく米軍艦船への洋上給油など支援活動を検討している。
周辺事態法では、戦闘状態になった場合、自衛隊は活動を中断することになっているが、米軍を置き去りにし撤収することが許されるのか-。集団的自衛権に関する政府見解が課題となる。
首相は国会答弁で「公海上で日本と米国の船が並走し米国の船に攻撃がなされた際、日本は救助できないのか」と問題を提起。
久間章生防衛庁長官は「補給活動のときには、(日米)どちらへの攻撃か峻別(しゅんべつ)できないことがある。現実には(自衛隊法の)武器等防護の規定に基づき反撃せざるを得ない」との見解を示した。
だが、明らかに米軍を狙った攻撃である場合にどうするのか、課題が残る。
北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃するミサイル防衛(MD)システムの運用をめぐっても、集団的自衛権の政府見解がネックだ。
米国を狙う弾道ミサイルを自衛隊は迎撃できないのではないか、との課題がある。
このため、シーファー駐日米大使は10月、都内での講演で「米国は敵のミサイルが日米どちらに向かっていても撃墜を試みるが、日本はそうはなっていない」と述べ、日本に政府見解を見直すよう促した。
日米同盟を効率的に機能させることで、東アジアでの抑止力を維持すべきだとの考えの首相は、9月の所信表明演説で「いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究していく」と述べた。
しかし、政府部内での研究作業は進んでいないのが実情だ。