◆【社説】「PSI参加は戦争招く」とした政府・与党の詐欺劇 (朝鮮日報 06/11/15)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2006/11/15/20061115000002.html
千英宇(チョン・ヨンウ)6カ国協議首席代表は14日、「大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)に参加するからといって武力衝突が起きる可能性はない。しかし国民がどのように考えているのかも重要な問題だ。PSIについてはさまざまな懸念や誤解があるため、そうした国内の状況を考慮し、そのように(PSIに正式参加しない方向で)決定した」と語った。
千代表に言われなくても、PSIが武力衝突を引き起こす可能性が薄いということは、それなりに事情を把握している人なら誰でもわかる話だ。
PSIの適用範囲は領土と領土の間の水域や領海(領土から12海里)、接続水域(24海里)に限られ、海上では各国が自国の国旗を掲げた船舶に限って検問することができる。
北朝鮮が大量破壊兵器を積んで韓国の接続水域を通過することは想像しがたい。そのため南北が直接衝突する可能性はほとんどないといえる。
実際、PSIには米国や英国など75カ国が参加しているが、2003年の採択以降これまでの4年間にPSIが原因で武力衝突が生じた事例はまだ一件もない。米国が韓国にPSIへの正式参加を求めているのも立場表明の意味合いが大きく、北朝鮮との軍事衝突も辞さないようにという話ではない。
政府与党にはこうした事情を国民によく説明し、PSIに対する誤解があればそれを解くよう努力する責任があった。
しかし現実には正反対のことが起きた。与党ヨルリン・ウリ党の金槿泰(キム・グンテ)議長(代表にあたる)は北朝鮮が核実験を行った直後の先月12日、政府関係者がPSIへの参加方針を明らかにすると、「PSIへの参加は軍事衝突の引き金となる。与党と協議せずしてこの問題を論じる公職者には相応の責任を問う」と非難した。
その翌日、ヨルリン・ウリ党議員77人は「PSIは予期しない物理的衝突を引き起こす危険性がある」との声明を発表した。
与党の代表や議員が国の重要な局面で「家に火がついた」とデマ情報をふれ回ったのだ。これは、南北軍事衝突のシナリオをでっち上げ、国民を脅かして世論をかどわかそうとしたものだ。
こうした対応が盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の無知のせいなのか、あるいは事情を知りながらも演出を企てたものなのかはわからない。
問題なのは、出まかせを並べた与党や、結果的にその言いなりとなった政府によって、大韓民国は同盟国からの信用を失って孤立し、またも国際的な対北朝鮮包囲網の一角に穴を開ける「成果」を金正日(キム・ジョンイル)総書記に献上する結果となったという事実だ。