◆【岩崎慶市のけいざい独言】やっぱり油断がならぬ公務員 (産経 06/11/20)
「油断がならぬ『隗(かい)より始めよ』」と書いたのは、1年半前だった。財政再建にはまず、公務員自らが身を削るべしと。公務員の本格改革が始まったころである。
ただ、公務員はあの手この手でごまかすから、表面的には改革が進んでいるように見えても油断してはならないと警告したのである。とくに職員組合の“支配”が続く地方公務員には、要注意の赤丸をつけておいた。
やっぱり、油断はできなかった。その典型的なごまかしが、ごみ収集や給食といった技能労務職、つまり現業部門で行われていたのだ。
この部門の給与は不合理な手当を除いても、国家公務員のそれに比べ2割は高かった。彼らが組合の中核を占めることを考えれば、その理由は察しがつこう。しかも、国・地方の給与を比較するラスパイレス指数にも含まれぬ聖域とあって、手が付けられなかった。
この是正に乗り出したのは一昨年度からである。国家公務員並みに引き下げるために、地方の全体予算である地方財政計画で、2年間で2500億円を圧縮、地方交付税も減らした。これで是正はされたはずだった。
ところがである。先に公表された財務省調査によると、不思議なことに給与水準はさっぱり下がっていなかったのである。では、その給与原資はどこから捻出(ねんしゅつ)したのか。住民への行政サービスを削ったとしか考えられないのだ。
住民を犠牲にして自分たちの法外な高給与を維持するとは、何たる了見か。もちろん、こうしたごまかしは現業部門にとどまらない。
一般の地方公務員給与も国家公務員ではなく地元民間企業に準拠する方針になっているのだが、是正は月給、ボーナスとも遅々として進まない。官民格差は縮まるどころか拡大の一途である。
最大の理由は首長と職員組合のなれ合いにあるが、第三者機関である肝心の人事委員会が眠っていることも大きい。国の人事院勧告と他の都道府県をにらんだ横並び勧告しか出さないのだ。
それもそのはず、委員は弁護士、公務員OB、地元財界の実力者が大半を占める“名誉職”だからで、首長や組合と戦う姿勢など端(はな)からない。そして議会はチェック能力を持たず、住民も無関心ときている。そうした温床があるから岐阜県庁の裏金問題も起こった。
地方公務員は住民税だけでなく、地方交付税という国税で養われている。国民も監視を怠れない。