◆世界の貿易量拡大に対応-パナマ運河拡張 (世界日報 06/11/21)
ニカラグアでも運河構想
中米のパナマで先月二十二日、パナマ運河拡張の是非を問う国民投票が実施され、賛成多数で来年から工事が始まることになった。
中国からの貿易量拡大や船舶の大型化などに対応、その上で歳入の増加を狙うパナマだが、ニカラグアが「第二のパナマ運河」計画を発表するなど、未来に向けての課題も残る。
太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河は、一九一四年に米政府によって建設された。
九九年にパナマ共和国に返還された後、同国の歳入の柱となってきたが、近年は中国を中心としたアジア経済の活性化とそれに伴う貿易量の増加に加え、相次ぐ大型船の建造などから、運河の大型化と効率化に対する要求が増えていた。
現在のパナマ運河では、「パナマックスサイズ」と呼ばれる幅三十三㍍以下の船しか航行できない。
近年の世界経済拡大に伴う貿易量の増加は、より輸送効率の高い大型船の時代に突入、パナマ運河を通れない大型船(ポスト・パナマックス)は、二〇一一年には世界のコンテナ船総数の37%に達するといわれている。
また、パナマ運河の運航量自体も年々増加、混雑のために同運河を利用できない船も年々増えているのが現状だ。
パナマ運河庁(ACP)は、国民投票の結果を受けて、現在より大きい三つ目の運河の建設に来年から取り掛かり、一四年度の完成を目指す。
建設費は五十二億五千万㌦(約六千二百億円)で、海外から二十三億㌦を調達する。建設費は通航料金の値上げと運航量の増加で相殺する予定だ。
工事後は、幅四十九㍍の大型船が運航可能となり、積載量で現在の三倍の大型船が通航できるようになる。
また、現在パナマ政府は、運河から国庫収入として四億八千九百万㌦(約五百七十億円)を得ているが、運河拡張により現在の倍以上の国庫収入が得られることになる。
早ければ来年にも工事が始まるパナマ運河拡張工事だが、中米ニカラグアが今月初め、同国に太平洋と大西洋を結ぶ「第二のパナマ運河」を建設する計画を明らかにした。
今後、国会などで可決されれば、十一年間、百八十億㌦(約二兆一千二百億円)をかけて運河建設に取り掛かるという。
ニカラグラは、新興経済国で南米との貿易量が年々拡大しているロシアや中国などにも投資参加を呼び掛ける予定だという。
「第二のパナマ運河」の建設により、ビジネスチャンスと同時に中米の重要国の位置を狙おうとするニカラグラだが、問題は国家予算の四倍にも当たる建設費だ。
建設費のほとんどは海外の投資に頼ることになるが、「第二のパナマ運河」の建設に対しては、「パナマ運河と運航量の奪い合いで採算が取れない」「世界の貿易量は今後も拡大するために不可欠だ」と建設の可否について専門家の間で意見が分かれており、海外の投資をどれだけ集められるかに今後は注目が集まりそうだ。