◆【清水満のスポーツ放談】ギャラリーのマナーの悪さ (産経 06/11/24)
連日、5000人以上のギャラリーが駆けつけた。超スーパー・スターのタイガー・ウッズがお目当てだ。ひと目でも見たい、しかもより近くで…。「ウォーッ!」というどよめき。目の前の異次元シーンに驚嘆する。
先週、宮崎で行われたダンロップ・フェニックス・トーナメント。ウッズのすごさの裏に、ギャラリーのマナーの悪さが目立った。
ショットの直後、人々は民族移動がごとく次へ動く。より良いポジション確保…というファン心理も理解できるが、プレーしているのはウッズだけではない。
ボランティアが“静かにしてください”のプラカードを掲げ「プレーに入ります」と声をかけもザワザワ…。何度プレーが中断されたことか。
予選ラウンドで2日間回った谷原秀人はウッズが打った後にプレーすることが多く、動く集団に明らかに集中力を切らされていた。これを乗り切ってこそプロとも言えるが、ギャラリーの質の悪さも問われるべきだろう。
携帯電話も鳴る。2日目、ウッズは7番ホールでティーショットを大きく左に曲げ、林の中に入れてしまたったが、打つ直前に“鳴った”。ギュッとにらみ、仕切り直したが…。
場内は撮影禁止となっているが、お構いなしにカシャリとシャッターを押す音が響く。至る所で見られた。
いっそのこと入場門でのセキュリティー・チェックを徹底するという手もあるが、「今は考えていません。あくまでマナーにかかわることだし、こちらは促すしかないですね」。統括する日本ゴルフツアー機構は、ファンの意思に委ねる姿勢を今後も続けるという。
米国では、“ルール順守”が基本だ。みんなで決めたことは、本当によく守る。ゴルフでも野球でも楽しみを妨げるルール違反に対してファン自体が許さない。きぜんと注意して、時には悪い奴をみんなでつまみ出す。
選手が良いプレーをする環境を、ファンがつくる。良いファンが、良い選手を育てているという気がする。ウッズを破って優勝したハリントンは「ミスはすべて自己責任、いちいち怒ってなんかいられない」。確かにプロフェッショナルの言葉だが、最低限のマナーは求められるだろう。
LPGAツアー選手権(23~26日、宮崎CC)が始まった。宮里藍が帰ってきた。初日は雨でサスペンディッド、混乱はなかったが、1カ月前のミズノ・クラシックではカメラのシャッター音に悩まされ、何度も仕切り直しを余儀なくされたシーンがあった。さらに人気者・ミッシェル・ウィーが男子のカシオワールド(高知・黒潮CC)に参戦している。
ゴルフはマナーのスポーツといわれる。週末には両ゴルフ場にドッとファンが訪れるだろう。見る側もちゃんとした“出迎え”をしてほしい。