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◆オイルダラーが引き起こす世界的な不均衡 (日経BP 06/12/12)


http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20061212/115466/

米財務長官は中国ではなく中東に行くべきだった理由

 世界の石油の3分の2が問題を抱えた新興国から供給されているという事実は、それだけで十分な不安材料だ。それほど目立たないが、もっと警戒を要するのは、石油価格の高止まりと中東、ロシア、ベネズエラといった地域の外国資産の積み上げで、オイルマネーの影響力が増大していることである。

 米国が中国に専念している中、この問題はあまり広く論議されていない。12月14日、米国のヘンリー・ポールソン財務長官と上級政策立案者チームが訪中し、中国に今年約2000億ドルに達する見通しの経常黒字の削減を迫ることは、世界の不均衡を巡る議論の中で、中国の黒字と安すぎるとされる人民元に過度の関心が払われていることを示している。

 中国の黒字は、石油輸出新興国の黒字と比べると、はるかに小さく見える。石油輸出国の経常黒字は合計5000億ドルに達すると見られ、その半分以上を中東が占める。国内経済の規模に照らすと、これら産油国の対外黒字はさらに大きく見える。

 サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェートの経常黒字は平均して国内総生産(GDP)の30%に上り、中国の8%という数字は、ほとんど「ささやか」なものに見える。

 こうした黒字は、国際的な資本フローに絶大な影響力を持ちつつある。そして、それは正しい政策の処方箋が適用されない限り、世界的な不均衡を整然と正そうとする努力を台無しにするかもしれない。

 過去4年間にわたる石油収入の増大は恐らく、これまでに特定の国家集団が謳歌した過去最大の棚ボタ利益である。石油輸出諸国の経常黒字は実質ベースで、1970年代のオイルショックのピーク時の2倍以上に上る。

 国際通貨基金(IMF)によれば、2003~2007年の5年間で、石油輸出諸国の累積黒字は最大1兆7000億ドルに達する見込みで、7000億ドルという中国の予想額を圧倒している。

 これまで、石油の高騰と法外な黒字が続く期間は長くなかったが、今回は長引く可能性がある。石油価格は最近やや下がったとはいえ、大方の専門家は、供給逼迫によって平均1バレル60ドル近い高値が続くと見ている。

 1990年代の平均水準の3倍だ。石油輸出国は、過去のブーム時と比べると、棚ボタ利益をあまり輸入に使わず、より多くを貯めこんでいる。石油価格が安定して輸入が増え始めれば、経常黒字は縮小するが、それでも尋常でない黒字が残ることになる。

 オイルダラーの急増は、主として2つの影響をもたらす。第1に、それは泡立つ金融市場をかき回している流動性の根本原因の1つだ。中東マネーは、中国の資本よりもはるかに追跡が難しい。

 外国資産の大部分が、公的な準備金としてではなく、秘密に包まれた政府系投資基金の形で保有されているためだ。

 さらに、中国は米国債を米国のブローカーやディーラーから直接購入するのに対して、中東の基金が米国債を購入する場合は大抵、ロンドンの仲介人を経由し、真の所有権が隠蔽される。

 溢れたオイルマネーはまた、株式市場、ヘッジファンド、プライベートエクイティー(未上場株)、不動産にも大量に流れ込んでいる。

 1970年代にはオイルダラーは米欧の銀行に預けられた。そして銀行がその預金の多くを新興国に貸し付け、中南米諸国の債務危機の芽を作った。今日、近代の資本市場の複雑性を考えると、だぶついたカネは違った類の問題を誘発しつつあるのかもしれない。

 第2に、中東諸国は中国と同じように、世界経済が均衡を取り戻すのを妨げてきた。

 だが、中国がようやく、より柔軟な為替レートに向かってゆっくりと動き出したのに対して、サウジアラビア、クウェート、UAE及びペルシャ湾岸諸国の大半の通貨はドルにしっかりペッグ(固定)されたままで、中東諸国の貿易上の巨額利益を考えると、各国通貨は恐らく人民元以上に過小評価されている。

ドルに連れ安

 中東諸国の通貨のドルペッグは、石油価格が高騰するにつれ、貿易を加重した実質為替レートが不自然に下がったことを意味する。それが各国の国内経済でインフレを押し上げ、資産価格と融資のバブルを煽っている。

 これらの通貨を弱いドルにペッグさせることはまた、自国の輸入需要を減退させ、ひいては世界的な不均衡の解消を妨げる。産油国が輸入と政府支出を増やせば、世界経済の安定を脅かす不均衡の解消に役立つだろう。

 中東諸国通貨のドルとの結びつきは、ドルを安定させることもない。オイルマネーの多くを運用する政府系投資基金は、中国の中央銀行と異なり、流動性の高い資産の保有に関する規制を受けない。

 彼らのリスクとリターンの考え方は、民間投資家のそれに近い。かくて、もしドルの下落が続くように見えれば、石油輸出国は中国以上にドル離れを進める可能性が高い。

 米国の有権者は今のところ、中国を敵視しており、あらゆる経済問題が中国のせいにされている。それがまさに、ポールソン氏が訪中する理由だ。

 しかし、訪中は政治的な利益を生むかもしれないが、もし米国の経済展望を改善したいのであれば、ポールソン氏は訪中を早めに切り上げ、帰路、中東に立ち寄るべきである。
by sakura4987 | 2006-12-14 09:35

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