◆【社説】児童ポルノ漫画/制作そのものを禁止せよ (世界日報 06/12/29)
子供を性行為の対象として描いた漫画やゲームなどについて、警察庁の「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」(座長・前田雅英首都大学東京教授)は性犯罪を誘発するとし、業界の自主規制や販売規制など対策強化を求める報告書をまとめた。
≪■業界に期待できぬ自主規制≫
性犯罪の被害に遭う子供が後を絶たない中で、この報告書が公表された意義は小さくない。だが、果たして業界による自主規制の効果を期待できるのか甚だ疑問である。
子供を性欲の対象とするわいせつ漫画を制作・販売していながら、社会への悪影響を考慮して自主規制する良心的な業者が多く存在するとは到底思えない。
悪質な性犯罪を誘発するという問題の深刻さを考えれば、自主規制や販売規制ではなく、制作そのものの禁止を検討すべきだろう。
「被害者の裸を見て、コミック誌に女の子の身体に針を刺す場面があったのを思い出し、被害者をもう少し弄(もてあそ)ぼうと思って、安全ピンやカッターナイフの刃を使って同女が怖がる様子を見て楽しんだ」
わいせつ漫画に刺激されて犯した性犯罪の例として、報告書はこの裁判所の判決文を紹介している。これを読んだだけでも、この手の犯罪がいかに悪質であるか、が分かる。
にもかかわらず、大手書籍販売サイトを調査すると、アダルトコミックのうち三割が子供を性行為の対象にしたものであるばかりか、小学生以下を対象としたものも5%もある、という。
十三歳未満が被害に遭った性犯罪は、「強制わいせつ」だけでも昨年一年間で約千四百件も起きている。
「児童ポルノ」と定義してもおかしくないわいせつ漫画が、小学生さえも性行為の対象と見る異常な風潮を生み、子供への性犯罪を増やしているのは間違いない。
電車の中で、児童ポルノ漫画を広げる人の姿が珍しくないほど、わいせつ漫画が蔓延した背景には、現在の児童ポルノ禁止法の欠陥がある。
同法は子供を性行為の対象とした写真やビデオを「児童ポルノ」として製造や販売を禁止しているが、わいせつ漫画は規制外なのだ。
この法律が子供の人権を守るために作られたもので、漫画は実際に人権が侵害された子供が存在しないという理由と表現の自由への配慮から、とされている。
だが、同法の原案ではわいせつ漫画も規制対象になっていた。それが修正されたのは「児童ポルノ禁止法は平成の治安維持法」とする左翼的な弁護士、学者などによる執拗(しつよう)なロビー活動があったからだ。
今や映像技術の発達で、本物なのか架空の画像なのか、区別が付かなくなった。大人の画像を加工して子供に仕立て上げるなど、実在する子供が登場しないポルノも存在する。
しかし、子供を性の対象として描き、見た者を犯罪に誘い込むという点においては、本物の画像か、そうでないのか、ということは本質的な問題ではない。
しかも、これまでは一部の書店でしか購入できなかったわいせつ漫画が、今はネットを通じて、全国どこにいても、たとえ未成年者でも簡単に入手できる。
こうした状況に対して、何らの対応もとられてこなかったことを考えれば、その業界に対して、これから効果的な自主規制を期待するのはあまりにも楽観的過ぎる。
≪■法改正し異常な風潮一掃を≫
もはや、法律を改正して、わいせつ漫画も「児童ポルノ」として規定し、制作そのものを禁止しなければ、こうした異常な風潮は一掃することは難しいだろう。