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◆2007年を斬る: 人口減社会の実像(後編)



人口政策には限界、一人ひとりの合理的選択に委ねるのみ

 人口を人為的に制御することはできない。一人ひとりの選択に委ねるしかない。

 その選択が合理的であるように議論を尽くして考え抜くことが、今に生きる者の未来への責任だ。国立社会保障・人口問題研究所の金子隆一・人口動向研究部長は、そう訴える。


(前編から続く)

NBO 何かとんでもないことでも起きない限り、1.26の出生率が2を超えていくようなことは社会現象として考えにくいようですね。日本の人口は減り続けるしかないのですか? “底”は全く見えていないんですか?

金子 はい。今回の人口推計は2055年時点までのものですが、あくまで参考として2056年から2105年までのさらに50年間についても推計をしました。2055年の状況のままで推移すると仮定したものです。

NBO 100年後の2105年に人口はどのくらいになるんでしたっけ?

金子 4459万人です。出生率を中位、死亡率が中位とした場合です。

NBO なるほど。資料によると、最悪の場合(出生率が低位、死亡率が高位)で3357万人、最良の場合(出生率が高位、死亡率が低位)でも6274万人ですね。要するに100年後に日本の人口が半減することはほぼ間違いないのではないかと。

金子 参考推計としてはそうなっています。


■国、民族、伝統、文化の存亡の危機


NBO グラフ(図2)を見る限り、定常点は全く見えないですね。

金子 ないですね。数学的にはゼロに均衡していきます。

NBO これは、凄まじいことですね。言葉を選ばないで言うと、年金がどうのこうのというのが目先だけを見たちっぽけな問題のような気がしてきました。

 国とか民族、伝統、文化の存亡がかかった話じゃないですか。

金子 私たちもそういうふうに思っています。もちろん、年金や社会保障システム、経済の問題も間近な問題として重要であることは当然ですが…。

 もちろん、100年先までに何があるかということを予測するというのは、人類の力量をはるかに超えています。

 繰り返しますが、「現在の状況がこのまま続いたら」という仮定に基づいた参考値を示すことによって、今後の議論の1つの基準として見ていただくことが重要だと思います。

NBO 2105年以降については数字を出していないんですか?

金子 いえ、さすがにそこから先は出していません。

NBO そうですよね。2世紀先みたいな話は、いくら科学的にやったとしても荒唐無稽な話になりかねないですからね。

金子 そうですね。


■人口政策によるコントロールは不可能

NBO 人口の専門家である金子さんにぜひ聞きたいのは、「コントローラビリティー」があるのか、ないのかということです。

 50年後に9000万人は少なすぎるから1億人にもっていこうと。じゃあ、出生率をこれだけ上げればいいじゃないかというような。人口を人為的に、社会政策的に制御することはできるんでしょうか?

金子 コントロールの仕方の1つとして、「人口政策」と呼ばれるものがあります。しかし、これは非常に微妙な問題を含んでいます。

 人口を決めるのは、結婚であるとか、出産であるとか、人の寿命であるとか、国際人口移動とかいう人間の営みです。

 外国人労働者をどのぐらい受け入れるのかにしても、その時、例えば日本人のアイデンティティーは保たれるのかというような大きな問題に直面します。

 人口の数字だけを見ているとコントロールできる気になる人もいるかもしれませんが、その一つひとつの数字の裏には一人ひとりの人生がある。

 では、人の人生をコントロールできるのかという問題に帰結していくわけです。

 もちろん、子供を産みたいのに産めない状況があるから、そういうものを取り除いていくというようなことは大いにあり得るわけですが、産みたくない人にもう1人産みなさいとか、明示的に言わないまでも社会的なプレッシャーを与えていくようなことがあるとすれば、それは恐ろしいことだと思います。

 少子化対策は大切ですが、知らないうちに子供がいないことを責めるような空気を作り出すことになるかもしれない。

 人口政策というのは、人々のライフコースや生活に介入していくことなので細心の注意を払わなければいけない。個人の意思に反して国家の意思が動くというのはね…。

NBO そうすると、我々はこの推計結果を、推計ではあるけれども、1つの結果として受け入れざるを得ないんでしょうか。

金子 いえ、私は決してそうは思いません。これは現状のまま推移させるとこういう姿になるということを提示したものであって、絶対にこうなるというものではありません。

 政府だけではなくて、企業だとか、地域だとか、家族だとか、個人のレベルまで含めて、みんなが自分たちの幸せの在り方というものと、国の大きな方向性が直結しているんだということを実感していただいて議論を深めていくという材料にしていただきたいのです。


■“今”の日本社会を50年後に向けて投影したもの

NBO 要するに、この推計データは“今”の日本社会の状況を、50年後という未来に向けて割と正確に照らし出したものなんだという言い方ができるかもしれませんね。

金子 その通りです。人口推計というのは英語で言うと「Population Projection」です。プロジェクションというのは投影、要するに何かに光を当ててそれを壁に向かって拡大して見やすくする、そういう意味合いがあります。

 我々のやっている日本の将来推計人口というのは、現在の日本の姿を将来の姿として分かりやすく描こうとしたものです。

NBO だから、コントロールはできないかもしれないけれども、方向性を変えることはできる。

金子 そうですね。将来の人口は、今に生きる我々の行動、これからの行動でつくっていくものなんです。そこを勘違いしていただきたくないのです。

NBO それを聞いて少しほっとしました。こういうデータを基に大いに議論すればいいし、議論する時間はまだ残されているということですね。

金子 ええ。いろいろな意見があってもいいと思います。ただ、誤解に基づいた議論というのは百害あって一利なしです。データや実態をよく確かめて議論していただきたいのです。

 当面、人口は確実に減ります。

 日本より人口規模が小さくても経済が順調に回っている国はたくさんありますから、規模自体が小さくなるということはそれほど問題ではないかもしれません。


■「均衡崩壊」と「驚異的速度」の衝撃は大きい

 しかし、問題が2つあります。第1にバランスです。年齢構成に尋常ではない大変化が起きます。今までの社会システムでは対処できないでしょう。全く新しいシステムを先に作っていかなければならない、そういう類のものです。人口が減っていくのを、ただ傍観していられるという状況ではありません。

 第2に人口減少、人口高齢化のスピードです。どこの先進国でも人口高齢化が進んでいきますが、日本は群を抜いて速いスピードで高齢化している。1990年代初頭は先進国の中で一番高齢化率が低い方でしたが、いまや世界トップクラスです。

 これは戦後に起きた出生率の急低下によるものです。

 戦前は4人、5人という子供を持つことは普通でしたが、10年にも満たない期間に子供は2人という状況に一気に下がりました。

 これが日本の人口転換だったのですが、その結果として世界で最も速いスピードで高齢化が進んでいるのです。70年代半ばから続いている少子化がそれに拍車をかけています。人口ピラミッドの形は急速にいびつになっています(図3)。

 人口変化の原因と結果は、100年規模にわたるものです。そういう意味では、現在の日本の高齢化状況は既に戦後、昭和30年代の時点で決定づけられていたわけです。

 統計マンとして少し突き放した言い方をすれば、このことはずっと以前から分かっていたことです。その時になって慌ててももうどうしようもありません。

NBO 統計マンの立場から、こういう手を打たなければいけないのではないかという提言はありますか?

金子 先ほども言ったように、少子化だ、出生率を上げろ、と短絡的に考える方もいると思いますが、一番大切なのは実際に子供を産む世代の人たち、結婚する人たちがどう考えているのかということです。

 その人たちが、自分たちの人生はこれでいいんだと考えているんだとすれば、それについてとやかく言うことはできません。個人の選択に介入することになりますから。

 本当は子供がもっと欲しいんだけど、いろいろな制約があって持てないというのであるなら、その障壁を取り除く努力はできると思います。

 そういうところが、本当はどうなのかとかいうことを知る必要があると思います。少子化対策が難しいのはそういうところです。

 ただし、経済的な問題や仕事、教育、住居といった具体的に見えている課題については是正策をすべて打ったとしても、置き換え水準に戻るかどうかは分かりません。


■合理的な選択を下すことが未来に対する責任

NBO それは“分からない”のですか。それとも“無理だ”ということですか。

金子 “分からない”です。社会情勢によっても変わってきますから。

 結局のところ、自分の人生をどうするのか、自分の息子や娘の人生はどうなるのか、孫はどうなんだということを、国や社会とのつながりの視点でみんなが考えなければいけないと思います。

NBO そういう選択の集積が、今のような形に投影されてきたわけですしね。

金子 産めと言われて産んでいるわけではない。産むなと言われて産むのをやめているわけではない。

 個人の合理的な選択がなされているということが一番の基本だと思います。

 人口推計は、皆さんが自分や家族の人生について考えたり、議論したりするうえでの1つの材料に過ぎません。ですから、統計マンである私から明快な答えを示すことはできません。

 未来は一人ひとりの選択に委ねられています。

 私見ですが、個人個人が自分の人生について自信を持って選択すること、その選択が少しでも合理的であるように考え抜き、議論を尽くすことが、今に生きる者が未来に対して負っている重い責任だと思います。


金子 隆一(かねこ・りゅういち)氏
国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部長

東京生まれ。東京大学理学部(生物学科自然人類学課程)卒業後、東京大学理学系大学院修士課程、ペンシルバニア大学大学院博士課程を修了。1982年、国立社会保障・人口問題研究所入所。専門は人口統計学。共著に『少子化の人口学』(原書房)がある。
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by sakura4987 | 2007-01-16 08:18

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