◆宮塚利雄・宮塚寿美子『北朝鮮 驚愕の教科書』(文春新書)
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より
平成19年(2007年) 2月17日(土曜日)
宮塚利雄氏といえば、リュックサック担いで、いとも気軽に北朝鮮を旅し、あらゆる箇所に出没する不思議な御仁。大学教授でもあるが、ジャーナリストでもある。
宮塚さんのフットワークの強さは誰もが認めるところ。
そして、北朝鮮を旅する旺盛な意欲もさりながら、十年の歳月をかけて、執念深くコツコツと蒐集したのが北朝鮮の小学生教科書だった。
いったい、個人崇拝の、かのカルト国家では何をどうやって子供達に教え、あの“反日カルト”を意味もなく量産しているのだろうか?
教授の娘さんと一緒の作業で、この大プロジェクトが始められた。しかし本来なら、この仕事、外務省がやるべきことではないのか。
教科書に並ぶのは信じられないような日本に対しての非難、罵倒、侮り、差別。(いったい、これはナンだ!)
通読していても頭がおかしくなる。驚愕のコトバが激しく並ぶからだ。
他方ではなんでもかんでも金日成元帥、金正日なる「首領様」を絶賛し、日本はすべて「野郎」呼ばわり。日帝野郎、天皇野郎。。。。。
たとえば、こういう荒唐無稽なはなしが教科書に載っているという。
ある日、「偉大な領導者金正日元帥様は、ご幼少の時お母様と一緒にある小学校をお尋ねになられました。偉大な元帥様は教室に入られ、地球儀を御覧になりました」(中略)
そこには日本と朝鮮が同じ色に塗られていたので、元帥様はたいそう怒り、「墨で日本の地を黒く塗りつぶしたところ、日本が真っ暗になり、雷鳴がとどろき」、あげくは「長いこと激しい夕立が降りました」とさ。
このように元帥様は「空と土地を自由に動かされる才能をお持ちである」
こういう歌も強制的に覚えさせられる。
「金正日将軍の歌」
♪ 「白頭につらなる麗しい祖国 将軍あおいで歓呼にどよめく
太陽の偉業つぐ 人民の指導者
マンセー マンセー 金正日将軍」
カルトの行き着く先は地獄しかないだろう。
しかし、こういう嘘物語を小学生から叩き込まれて洗脳されると、その洗脳を解くには同じ歳月がかかる。
中国人が鎖国を解かれて、はじめて日本に来た留学生にとって、最初のおどろきは「帝国主義、軍国主義の日本がどこにもないのは何故か、わからなかった」という逸話があるほどに。