人気ブログランキング | 話題のタグを見る

★★★ 日本再生ネットワーク 厳選ニュース ★★★

sakura4987.exblog.jp
ブログトップ

◆【正論】少子化問題の重さを真剣に考える (産経 07/7/9)




埼玉大学教授 長谷川三千子氏

 http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070709/srn070709000.htm

 ■子供産みたい若者の「常識」つぶすな

 ≪人類存亡にかかわる問題≫

 少子化問題については、すでに何度もくり返し語られてきて、いささか陳腐に聞こえることであらうが、これは本当に重大な問題である。もしいまのままの低出生率がつづくと、50年後の日本に生まれてくる子供の数はいまの半分になり、その世代が親になるときには、親の数が半分になつて、生まれてくる子供の数はさらに激減する-いはゆるネズミ算のちやうど逆で、あとは人口減少の急坂をころげ落ちるといふことになる。

 つまり、このままでゆけば、日本は遠からず確実に消滅するといふことになるのである。

 しかもこれは日本一国の現象ではない。いま、これまでは人口爆発が問題であつた国々でも、出生率が軒並み急低下してをり、それがほどよいところで止まる保証はどこにもない。これは大袈裟(げさ)でなく、人類の存亡にかかはる問題なのである。

 そもそも人間以外のすべての動物にとつて、自らの子孫を残すといふことは、ほとんど唯一最大の究極目的である。雄の鳥が美しくさへづるのも、雄鹿が大きな角を競ふのも、すべてはこの大目的のためである。

 ただし彼らは意識的にそれを目指してゐるわけではない。体内の精密なメカニズムによつて、動物たちはいはば自動的に繁殖といふ大目的を目指すのである。

 さうした精密なシステムに支配されてゐないわれわれ人類は、そのかはりに文化、慣習、常識といつたものを持つてゐる。

 実際、つい先頃までは、大人になつたら結婚し、子供を産み育てるといふことが、人間界の当然の常識であつた。

 自らが生物であることを忘れてしまつたかのごとき人類が、それでも滅ぶことなく繁殖しつづけてきたのは、このやうな常識と、それを支へる(家族といふ)文化システムのおかげだつた。


 ≪子供が3歳になるまで≫

 時代が変はつて、旧来の常識がうすれ始めてきたとは言つても、まだそれは死に絶えてしまつたわけではない。

 たとへば一昨年の統計では、若い女性の9割が結婚したいと願つてをり、その内の8割5分が、2人かそれ以上の子供を持ちたいと希望してゐるといふ。

 これ自体、まことに健全な願望である。ところがいまの世の中では、厚生労働大臣がこれを「健全」だと言つただけで袋叩(だた)きにあふといつたありさまなのである。

 さすがに、少子化対策の中心である「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議では、かうした若い世代の健全な常識を尊重しようといふ姿勢が多少なりとも見られて、先日の中間報告は、少子化の原因は産みたいのに産めないといふ「希望と実態の乖離(かいり)」にあると分析してゐる。

 ところが、ではそれをどう解決すべきかといふ話になると、たちまち女性の仕事と子育てを両立させられる社会へと変革しなければならぬといふ、実態をはなれた処方箋(せん)が持ち出されてくる。

 実際には「今後子どもが欲しいと考えている女性」のうち約8・4割が、子供が3歳になるまでは常勤で働きたくないと考へてゐるのである。

 つまり彼女たちが求めてゐるのは、保育所や社内託児所の充実ではなくて、むしろ2人の子供を産み育ててゐる5、6年の間、一家が安心して暮らせるだけの賃金を夫が得られることの保証なのである。

 また事実、さうした保証を得ることのできない非正規雇用の若い男性の結婚意欲と結婚率はきはめて低い。

 そもそも子供を産むといふことは、それだけでも女性の身体にたいへんな負担のかかる大事業なのであつて、その時期も外で常勤の働きをせよといふのは酷な話である。

 統計にあらはれた若い男女のかうした選択は、きはめて合理的かつ自然なものであると言ふべきであらう。


 ≪時計針の歩みを遅く≫

 ところが、かうした事実は重点戦略検討会議の中間報告にはまつたく反映されてゐない。

 実は私自身、この会議の分科会の一つに参加してゐたのであるが、そこでも、このやうな問題はほとんど完全に素通りされ、ただ「ワーク・ライフ・バランス」なる標語が連呼されるだけであつた。

 その中で敢へて、いまここに指摘したやうな事柄について発言したところ、朝日新聞が早速それを取り上げて「時計の針戻す委員主張」といふ見出しをつけてくれた。

 なるほど、いまの少子化対策に求められてゐるのは、地球環境対策と同じく、われわれの文明の暴走を抑へ、時計の針の歩みを(戻すまではゆかずとも)少しでもおしとどめることであらう。

 少なくとも、いま若い人々の内に残ってゐる常識を叩きつぶすやうなことだけはしてはなるまい。
by sakura4987 | 2007-07-14 10:49

毎日の様々なニュースの中から「これは!」というものを保存していきます。


by sakura4987