◆進まぬ遺棄化学兵器処理 中国主導・不透明さに疑問も
(産経 07/8/9)
旧日本軍が中国に遺棄したとされる化学兵器の処理事業が一向にはかどらない。国際条約で日本に義務づけられた処理完了期限は平成24年4月だが、早くも“黄信号”がともっている。一方で、日本が負担する事業費がどこまで膨らむかも極めて不透明で、使途と額の妥当性に疑問の目が向けられている。
旧日本軍が終戦時、中国各地に遺棄したとされる毒ガスの詰まった砲弾・爆弾などの化学兵器は、化学兵器禁止条約に基づき日本側が処理義務を負っている。発掘・回収から、高温で燃やして無害化処理するまでの事業費もすべて日本側の負担だ。
中国各地で、これまでに約3万8000発を回収。ただ、吉林省ハルバ嶺に、全体の9割を占める30万~40万発がいまだに埋設されているとみられ、当地での処理作業の行方が注目されている。
条約が定めた当初の処理期限は今年4月。日中両政府は昨年、事業の遅れから、化学兵器禁止機関(OPCW)に5年間の期限延長を申請し、認められた。だが、それでも、前例のない処理量だけに、「今後5年間で処理作業を終わらせるのはかなり厳しい」(政府関係者)という。
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中国の国内情勢も足を引っ張る。作業現場の規制にあたる人民解放軍との調整や、中国国内の環境関連法令の変更といった処理の前提となる条件整備がなかなか進まず、処理までの具体的なスケジュールが描けない。
処理期限の再延長は認められていないため、国会では「条約を守るべき義務が当然あるわけで、それは国際的な信頼にもつながる」(民主党・泉健太衆院議員)と、処理の遅れで日本が国際的信用を失うことに懸念が強まっている。
膨らむ一方の事業費にも疑問の目が向けられる。政府が平成18年度までに投入した遺棄化学兵器処理事業費はすでに約570億円に上る。今年度予算にも、約211億円が計上されている。
今後、建設される発掘・回収施設に940億円かかるほか、無害化処理施設の建設費は1000億円を超えるともいわれる。
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建設費と並んで費用がかさみそうなのが施設の維持・経費や作業員の人件費。今後の日中間の交渉次第では、条約で義務付けられた24年4月の処理期限以降も事業全体が終了するまで日本が経費を負担しなければならないことも考えられ、最終的な持ち出し額は見えてこない。
事業費の使途にも不透明さが残る。例えば、年間約35億円に上る対中要請事業経費。文字通り「日本側が中国側に依頼したことで生じる経費」で、ハルバ嶺周辺の道路整備費などとされる。
しかし政府は、今年5月16日の衆院内閣委員会で、この内訳の詳細について、「中国側との信頼関係が損なわれる」ことを理由に、かたくなに開示を拒否している。
質問に立った泉健太氏は「国民との信頼関係はどうなるのか。これは国民の税金だ」と憤慨し、経費の妥当性や中国側の主導で事業が進みかねない状況に、強い疑念を投げかけた。

