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◆【野口裕之の安全保障読本】自衛隊縛る“境界線” (産経 07/8/23)



 http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/070823/ssk070823002.htm


 日本の安全保障関係の法律には「平時」「有事」を分ける“境界線”が捏造(ねつぞう)されている。戦後醸成された軍隊への拒否反応が生み落とした虚構である。自衛隊暴発を阻止する「安全装置」名目で“境界線”をでっち上げたのが官僚と一部政治家だった。だが、現実はまったくの逆。”境界線”は自衛隊をがんじがらめに縛り、危急での行動を封じ込める足かせとなった。


 例えば、北朝鮮特殊部隊による交通機関爆破が起きたとする-。自衛隊の武力行使には「防衛出動」下令は必須条件。ところが防衛出動は「わが国に対する外部からの武力攻撃」に対して発せられる。その「外部からの武力攻撃」について、政府は「他国のわが国に対する計画的、組織的な武力攻撃」と答弁してしまった。特殊部隊が名乗るだろうか? 国家を持たないアラブ原理主義組織や日本の過激派による犯行の可能性も排除できず、防衛出動下令を即断できない懸念がある。


 防衛出動下令以前にも問題がある。自衛隊にはテロに備え「警護出動」が定められている。ところが「国民に銃を向けるのか」との自民党左派の大物議員らの認識により皇居、首相官邸、国会議事堂、原子力発電所は警備対象からはずされた。法律上、自衛隊は自らの基地と米軍基地だけしか警備できない。これ以外を守る場合は、警察官や海上保安官に犠牲が出るなど、警察・海保では対処できない状況が必要となる。実は自衛隊・警察合同訓練では、警察から「自衛隊は何をやっている。早く出動を」などと、催促されるケースが出始めている。国民の多くが危急の際の自衛隊出動を期待し、法律で担保されていると信じている。それが常識であるからだ。非常識な法律が、国民を裏切っている。


 裏切りは「平時=警察」と「有事=自衛隊」の間に、架空の境界線を政府が捏造、「自衛隊は有事に限り軍事行動をとる」との虚構をでっち上げたことに端を発する。「平時は警察。自衛隊の出動は警察の後」「“境界線”上における自衛隊は、あくまで警察権限で活動」という、柔軟性を著しく欠いた縄張りの固定化であった。


 特殊部隊・工作員による攻撃は広範囲に多発、規模もまちまちであるかもしれない。しかも、徐々に危険度が増したり、一気に深刻化したり。いうなれば、平時・有事はモザイク状に入り乱れ、変幻自在に推移する。時間と地域で平時・有事が混在する事態も想定される。法の欠陥を熟知した工作員なら、自衛隊の武力を投入させまいとして“境界線”を越えないよう、悪知恵を絞るだろう。


 一方、平時でも有事でもない「グレーゾーン」の存在を“境界線”ではもはや説明できなくなっている。例えば「朝鮮半島有事」などはわが国への飛び火が予想されるが、当初は「日本有事」ではない。そこで「周辺事態」なる概念を編み出した。周辺事態が日本の平時と有事の間に割り込んだ結果、1本だった“境界線”は図のように2本に増えた。

 周辺事態においては「後方地域」=「戦闘地域と『一線』を画する場所」であれば、自衛隊は米軍艦艇への給油などが許される。同時に給油中、米艦艇が攻撃された場合の給油休止もまた、法でうたわれている。これでは“境界線”を言い訳に、同盟国を裏切り敵前逃亡することを法で担保しているに等しい。


 実は、日本領域を含む後方地域こそテロの舞台。朝鮮半島有事の際、北朝鮮特殊部隊が日本でテロを起こし、国民を震え上がらせることで、自衛隊による対米軍支援から手を引かせる-戦術は実に効果的であるからだ。テロが予測されるのは「周辺」ではなく「わが国」事態なのである。しかも、ミサイル技術の進化により、後方地域は瞬時に戦闘地域と化す。日本が「一線」を画しても、北朝鮮は「一線」を越えてくる。前述の防衛・警護両出動時とはまさに逆パターンなのだ。


 国家主権を守る重大要件である「防衛力を効率的に生かし切れる、現実を直視した法的基盤」と「国家の意思決定メカニズム」は、かくも難解な造語と“境界線”で塗り固められ、機能不全に陥っている。「自衛隊にはギリギリまで軍事行動をさせない」という、軍隊に対する戦後の拒否体質が立法・行政両府にこびり付いている限り、機能不全は際限なく続く。
by sakura4987 | 2007-08-25 15:26

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