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◆【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(12) ■「国益より言い訳の技術」



 (産経 07/10/10)


 ■「国益より言い訳の技術」


 2006年初夏、日米当局者による安保協議が米国で開かれ、北朝鮮の不穏な動きをめぐって対応を協議した。北朝鮮がミサイル連続発射に踏み切る少し前のことだ。



 万が一、北のミサイルが日本の領域内に落下したり、周辺海域の漁船などに被害が出たら、大変な事態になる。米政府、米軍はどう動くか。日本政府は真っ先に何をすべきか。さまざまな不測の事態に備えて、日米の緊急対応を入念に検討しておくことが協議の狙いだった。



 ところが、日本側は周辺事態法の適用について「あれはできない」「ここまでが限界」といった法律の解釈論を長々と始めた。すると、米側の一人があきれたような顔で言い放った。



 「いったん有事になれば、国民の被害を最小限にし、敵の損失を最大にして一刻も早く紛争を終わらせることが至高の目的のはずだ。それが国益というものでしょう」



 だが、日本側からは答えがなかった、と出席者の一人が証言する。「日本の当局者は国会で追及されないように、言い訳を重ねる技術にしか目がいかない。国民の安全や国益を政府として、どうとらえているかを深刻に考えさせられるやりとりだった」という。



 国益が定まらなければ国家戦略も決まらない。何が国家の利益になるのかを国会や国民に説明することもできないのではないか。官僚だけではない。



 ここ10年間、日本の政治は官主導から政治主導への転換が叫ばれてきた。



 国民の安全を守る、国土保全を図る、エネルギーを確保する、環境を浄化する-といった漠然とした「国益」なら、政治家の誰もが口にする。にもかかわらず、それらを総合して優先度を示し、いかに整合性を持たせるかの政策的展開が官僚も政治家もスッポリと抜け落ちているのだ。



 自衛隊のイラク派遣やテロ対策特別措置法の問題でもそうした一面があった、と外務省幹部が振り返る。



 当時の小泉純一郎首相は「日米同盟と国際協力の両立だ」と述べたが、イラクに出ていくことが具体的に日本のどんな国益になるのかを十分に説明できたとは言い切れない。



 テロ特措法にしても、(1)中東・湾岸の安定が日本の安全と平和に不可欠(2)石油などエネルギー安保(3)日米協力の具体化-などに日本の国益があるのは当時も明白だった。「だが、政治指導者がそれを明示して論理的に説得する努力が欠けていた」とその幹部は言う。



 「国益を誰がどう決めるのかが、戦後日本ではずっとあいまいにされてきた。土台となる国益をきちんと定義し、その上に政策や戦略を築いていかなければ21世紀の国家戦略も描けない」と、森本敏・拓殖大学大学院教授(65)も指摘する。



 その証拠に、日本には「国家戦略」にあたる文書がない。「国防の基本方針」とかエネルギー、環境戦略といったものはある。だが、より高次の観点から外交、軍事、エネルギー、環境など個別政策を定める指針ともなる国家戦略文書が、政府や国会の了解の下にまとめられたことはない。



 「国益を明示した国家の総合戦略がないだけでなく、たとえ戦略ができても、それを実現する制度もない。日本が国家の心棒を欠いているのはまさにそこだ」と森本氏は言う。



 ■国家戦略の優先順位付けを


 米国には「アメリカの国益に関する委員会」という風変わりな超党派組織がある。設立されたのは1995年だ。



 冷戦終結直後、米国民は外交への関心を急速に失い、政治指導者も内政や目先の経済利益に目を奪われがちだった。



 世界では旧ユーゴなどの地域紛争、大量破壊兵器拡散とテロ、中国の台頭など新たな脅威や課題が浮上し、米外交に場当たり的な対応が目立つようになった時期だ。



 こうした情勢に、「半世紀間の冷戦戦略に代わる目標を定めなければ、新たな平和秩序を築く機会が失われる。米外交を漂流させてはならない」と危機感を抱いたハーバード大学のグレアム・アリソン教授らが提案し、民主、共和党議員や国家安全保障専門家など十数人を集めて発足した。



 主なメンバーには、クルーグマン・スタンフォード大学教授、ナン民主党上院議員、スコウクロフト元大統領国家安全保障担当補佐官、ライス現国務長官、アーミテージ前国務副長官らの名前も見える。



 彼らが1996年と2000年に公表した報告書は、米国がめざすべき国益を(1)死活的国益(2)きわめて重要な国益(3)重要な国益(4)二義的な国益-の4レベルに分類し、明確な優先順位を示している点が特徴だ。



 「死活的国益」には大量破壊兵器の脅威、主要地域での覇権国家の台頭防止、国際通商・経済制度の維持などを挙げ、これに次ぐレベルの国益には米国の技術優位の堅持などを示している。



 地域別の国益も、例えば東アジアでは「敵対的覇権国の台頭阻止」「日韓の自由と繁栄、対米同盟を維持」などを最優先する。中国を国際システムに組み込んだり、朝鮮半島や台湾海峡の紛争防止などをその次に位置づけている。



 もちろんすべてが公式政策となったわけではない。



 だが、委員会の提言は議会や政府、世論に活発な国益論議を喚起し、その後の米外交や国家戦略立案に多くの建設的な刺激を与えてきた。



 森本氏は、政治と国民が共有できる具体的な国益を描くために「日本でも米国のような組織を設けて論議をすべきだ」と提案している。



 日本版国家安全保障会議(NSC)創設を目指し、昨年末から今春にかけて開かれた「官邸機能強化会議」で、東シナ海のガス油田開発問題が論じられたことがある。



 中国は国家戦略として軍も動員してガス田開発を推進する。日本側は開発は民間、警備は海上保安庁、対中協議は外務省任せという実情だ。



 「トータルな外交、資源、経済、防衛の問題なのに、国家戦略がないために効果的な対応が決められない」。安倍晋三首相(当時)もいる前で、こう指摘する声が相次いだという。



 集団的自衛権の行使論議、核保有論議、東シナ海のガス田開発などのエネルギー戦略、環境問題など、日本が直面している国家安全保障上の課題は数多い。個別の課題を活発に論議しても、いずれを最優先するかが決まらない。



 「国益とは何か」を具体的にわかりやすく定義づけてその実現に優先順位をつける。それを国民に提示して、理解を求める。そんな作業は官僚組織にはできない。政治指導者がやらなければならないことだ。
by sakura4987 | 2007-10-10 13:59

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