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◆【土・日曜日に書く】大阪校閲部長・清湖口敏 二者択一の選挙に決別を



 (産経 07/10/14)


 ■参院選における二択

 マッチ棒クイズというものがある。棒を1本動かすだけで、それまでの図形が奇跡のように変化したりするから楽しい。そこで出題してみたい。先の参院選における安倍晋三首相(当時)の「私と小沢氏、どちらが首相にふさわしいか」という訴えが、ほんの少しだけ違ったものであったなら、自民党はあそこまで大敗することはなかったと思われる。では、どんな表現だったらよかったのか。

 答えは簡単だ。「私」と「小沢氏」を入れ替えて「小沢氏と私、どちらが…」と訴えればよかったのである。人は「AかBか」と問われて迷ったとき、つい後者の「B」と答えてしまう確率が高い。そんなセールストークの常識を安倍氏は知らなかったのだろう。

 その点、社民党は“立派”だ。「ツヨイ国がいいですか。ヤサシイ国がいいですか。」と、有権者に後者を選ばせるよう誘導している。ただし、この二者択一(二択)のコピーでは、「強くて優しい日本であってほしい」との国民誰しもの願いはかなえられない。社民党が参院選で振るわなかったのも順当な結果といえよう。

 -と、ここまでは愚にもつかぬ話だったが、実は最近の政治が二択形式で語られるケースがあまりにも多いのに、いささかウンザリしている。一昨年の総選挙は周知のように郵政民営化の賛否を問う二択選挙だったし、最近では自民党の総裁選も二択だった。

 ■ストレスはないが…

 二択は確かに分かりやすい。仮に各党の公約を比較検討した上で最良の党を選ぶとなると、国民は大きなストレスや負担を感じ、投票所に向かうのもためらうかもしれないが、「安倍か小沢か」なら、ネクタイの柄やコンビニの弁当を選ぶよりは、よほど気楽に選択することができる。

 しかし、分かりやすくストレスもないという二択の長所は裏を返せば、深い思考を伴わないという短所にもなる。「はい・いいえ」に類した二択の形式をとることが多い世論調査が、ごく一部ながらときに私意で歪(ゆが)められることがあったのも、そんな二択の短所と関係があるものと思われる。

 たとえば「テロ特措法は集団的自衛権を認めない憲法に違反するといわれている。それでも海上自衛隊の給油活動を継続させようという同法の期限延長に、あなたは賛成か、反対か」というような設問があったとすれば、それは明らかに二択を装った誘導質問であり、これでは結果が「過半数が反対」となるに決まっている。

 「~についてあなたの意見を」と聞かれてこそ、回答者は負担に思いつつも真剣に考え、答えるものである。二択とは違った結果になるのも言うまでもない。

 ■イメージ戦略に利用

 テレビのワイドショーもおおむね、視聴者にストレスを与えない、したがって深く考えさせないという作りになっている。思考の外のイメージに訴える手法がまさしくそれで、大きな絆創膏(ばんそうこう)を張った大臣のさえない顔を繰り返し流しては、「こんなことでよいのでしょうか」と問いかける。良いも悪いも「考えるまでもない」ことだ。視聴者はそうして笑っているうちに多くの人と共通の“見識”をもつに至る。テレビのイメージ戦略とはざっとこんな寸法だ。

 アメリカのニクソン元大統領は著書「指導者とは」(文芸春秋)で「テレビの力は(中略)猛烈な感情の力をもって歪めるため、理性的な世論形成をほとんど不可能にする」と言った。初のテレビ討論が実施された1960年の米大統領選挙でニクソンは、優勢が伝えられながら、テレビ討論で映ったケネディのスーツの着こなしや健康的な表情などによって一気に逆転されたといわれている。

 「私か小沢氏か」といった二者択一は、ともすれば理性より感情を刺激し、イメージ戦略に乗せられてしまう。結果として政治がまるで軽薄なショーに成り下がるのは、残念なことである。

 平成10年の参院選でも自民党は大敗した。当時の幹事長が著書で「どこまで国民にていねいに説明し、粘り強く説得してきたか」と振り返っている。安倍氏もその反省を生かし、年金問題だけではないあらゆる政治課題や自身の政治理念について、国民の理性に訴え、ていねいに説得すべきだった。国民の胸に響くように分かりやすく話すべきだった。

 ニクソンは先の著書でこんなふうにも言う。「政治指導者は、民衆の頭だけでなく、ハートにも訴えるものを持たねばならない。どんな立派な政策も、それを推進する人物が感情のレベルで民衆の心に触れるのでなければ、うまくいくはずがない」。選挙は…「マッチ一本『勝ち』のもと」とは、なかなかいかないようである。
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by sakura4987 | 2007-10-21 15:29

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