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◆「人権」の正しい歴史認識が必要 (産経 2008/3/3)






【正論】埼玉大学教授・長谷川三千子


 ■もし「擁護法案」を作るにしても…


 ≪■「常識」を反映するが…≫

 いま人権擁護法案がふたたび国会に提出されようとしてゐる。この法案の危険性については2月19日付の本欄で百地章氏がすでに意を尽くした解説をしてをられるので、ここでは少し角度をかへて、もしわれわれが本当の「人権擁護法案」を作るとしたら、それはどんな法案でなければならないのかを考へてみることにしよう。

 3年前に発表された案によれば、この法案の第1条には「人権尊重の理念を普及させ、及びそれに関する理解を深めるための啓発」といふことが目的の一つにかかげられてゐるのであるが、この〈人権についての理解〉といふことこそ、法案を作る人間自身にとつて、もつとも重要なことなのである。人権といふものについて、今更これ以上知るべきことなどない、といつた思ひ上がりほど危険なものはないと言つてよい。

 たしかに一見すると、人権といふものはただわれわれの素朴な常識を反映してゐるにすぎないやうにも見える。たとへば日本国憲法第13条には「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」について「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めてゐるのであるが、これは古今東西を問はず、およそすべての「よき政治」が目指す大目標として広く認められてきた事柄である。

 国民の生命を守れないやうな国政は失政であるし、さらに注文をつけるなら、国民が自由にのびのびと豊かな生活を楽しむことのできる政治が望ましい-このことに反対する人は一人もゐないであらう。だからこそこれらは「基本的人権」と呼ばれて、人権概念のなかでも最優先の重要課題とされてきたのだ、と理解できるのである。


 ≪■ホッブスの貴重な洞察≫

 ただ、ここで唯一の、そして最大の問題は、これらが「個人の権利」として認められてゐる、といふことである。たとへば極端な話、誰か或る人が、自分が生き延びるためには或る別の誰かを殺すことが必要だと判断し、それを実行したら、それは基本的人権の行使といふことになるのだらうか? そんなことを認めたら、いたるところで殺し合ひがおきて、生命尊重、幸福追求どころのさわぎではなくなつてしまふのではないか?

 かうした厄介な〈人権の逆説〉にいち早く気付き、警鐘をならしたのが、17世紀英国のトマス・ホッブスである。実は、彼はまさにかうした「個人の権利」としての人権といふ考へを最初にうち出した張本人なのであるが、同時に彼は、そのことの危険を誰よりもよく見抜いてゐた。

 それまで有効にはたらいてゐた、英国の「古来の法」やキリスト教神学にもとづく「自然法」といつた共通の価値基盤が崩れてしまつたとき、もし〈人間が人間であるかぎりにおいてもつ権利〉を各個人にばらまいてしまつたら、いかに悲惨な無秩序状態が現出するか-彼の人権論はそれを見据ゑたところに始まつてゐるのである。


 ≪■個人の権利ばかりでは≫

 18世紀末、「人権」の概念がアメリカ革命とフランス革命といふ二つの革命の熱狂によつて広まつたとき、ホッブスのこの貴重な洞察はほとんど無視されて、ただ〈個人の権利としての人権〉といふ発想ばかりが引き継がれてしまつたのであるが、よく見れば日本国憲法の内にもホッブスの洞察はからうじて活かされてゐる。

 すなはちそこには「公共の福祉に反しない限り」といふ一言がつけ加へられてゐて、これが非常に大切な意義をになつてゐるのである。もしもこの歯止めの一言がなければ、たちまち人権が人権を喰ひつくす〈人権の共喰ひ状態〉とも言ふべき事態に陥り、人権概念自体が崩壊してしまふことは間違ひない。

 したがつて、もしも本当の人権擁護法案を作らうとするならば、かうした「人権」概念の危険な特色をよく見極め、〈人権の共喰ひ〉をふせぐといふことを法案の柱となすべきであらう。ことに近年のやうに、新しいさまざまの「人権」が登場してくると、たとへば「プライバシー権」と「報道の自由」のやうに人権の概念同士が衝突し合ふといふ事態が多発すると予想される。それらを、国民全体の安全と幸福の確保、といふ政治の原点に立つて交通整理するための基本的な法律を作つておくのは大切なことだと言へよう。

 ところが、3年前に作られた人権擁護法案では、「人権侵害」はもつぱら「不当な差別」として想定されてをり、基本的人権の第一にうたはれる「生命」の権利については言及すらない。何をか言はんや、である。いまわれわれが必要としてゐるのは国民全体のための真の人権擁護法案なのである。
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by sakura4987 | 2008-03-18 12:21

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