◆合意形成に弾みつけたい 道州制論議 (西日本 2008/3/23)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20080323/20080323_001.shtml
日本経団連が道州制の実現に向けた第2次提言の中間とりまとめを公表した。2015年からの導入を目指す道州制を「究極の構造改革」と位置付け、現在の12府省を半数程度に再編・解体する構想を盛り込むなど、なかなか刺激的な内容である。
自民党の道州制推進本部も、道州制の導入時期を2015‐17年と明記した第3次中間報告の素案をまとめた。
人口30万人以上を標準的な基礎自治体とし、市町村数を現在の半分程度の700‐1000自治体に再編する一方、道州の自治立法で国の法律を変更できる「上書き権」も認める方針を打ち出している。
政府の道州制ビジョン懇談会も、今月中に中間報告を発表するという。
道州の区割りをどうするか。州都はどう選定するか。その前に、道州制の前提条件とも言うべき地方分権改革にどんな道筋をつけるのか。
壮大な構想であるだけに、道州制は各論や具体論に入ると、議論が拡散したり、袋小路に陥ったりしがちでもある。
だからこそ、「なぜ道州制なのか」という基本理念の論議は大切にしたい。国と地方を問わず、わが国の統治機構のあり方を見直す大改革である。
国民的な論議を盛り上げ、その方向を見定めるべきだ。政財界から相次ぐ道州制の提言は、そんな合意形成を目指す試みとして注目したい。
経団連提言の根底にあるのは「官の役割をゼロベースで見直す」という発想だ。「中央省庁半減」もここから導き出された。具体的な省庁名まで踏み込んでいないのは残念だが、これは道州制がもたらす必然的な帰結とさえ言える。
明治維新の廃藩置県にさかのぼる現行の都道府県制を廃止して、全国を10前後の道や州の広域自治体に再編する。地方自治体はこの道州と基礎自治体と呼ばれる市町村の二層制とし、内政の機能と権限・財源は国から地方へ移す。
そうすれば、中央政府の役割は外交や防衛、通貨管理など国家の専管事項に特化され、省庁も大胆に再編される。解体される役所も少なくないはずだ。
重要なのは、こうした構想を「絵空事」としないため「いますぐ着手すべき7つの改革」を提言していることだ。
「地方分権改革の断行」「地方支分部局(国の出先機関)職員定数の大幅削減」「地方交付税・国庫補助負担金の改革」などが盛り込まれた。
こうしたテーマは、全国知事会など地方6団体や政府の地方分権改革推進委員会が、まさに現在進行形で取り組んでいる。中央省庁が「ゼロ回答」で抵抗している難題でもある。
道州制という究極の目標を設定し、同時に現実的な地方分権を唱えて、改革の歯車を回していく。政策提言の積み重ねを通じて、そんな相乗効果を生む論議の深まりを期待したい。
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◆地方分権改革推進委員会「中間的な取りまとめ」(概要)
平成19年11月16日
http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/torimatome/071116torimatome2.pdf
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◆「道州、全国10程度に」自民推進本部
(朝日 2008/3/13)
http://www.asahi.com/politics/update/0313/TKY200803130371.html
自民党の道州制推進本部(本部長・谷垣禎一政調会長)は13日、党本部で総会を開き、道州制のあり方に関する第3次中間報告の「たたき台」を示した。都道府県を廃止して全国に10程度の道・州を設置し、市町村合併をさらに進めて700~1千の基礎自治体に再編することを打ち出した。導入の時期は2015~17年をめどとしている。党内で議論を重ね、5月の大型連休前に同報告をまとめる予定だ。
たたき台は具体的な区割り案を一つに絞らず、衆院比例代表の11ブロックや政府の第28次地方制度調査会が示した9、11、13ブロックなどを選択肢として挙げた。東京については外交や迎賓、皇室関係の首都機能があることから特別の配慮が必要だ、と指摘した。
権限や財源、人材は基礎自治体を優先して再配分し、都道府県の仕事は基礎自治体に、国の仕事もできる限り道州に移譲する。これに伴い公務員も移管し、国に残る公務員の総数を大幅に抑制すべきだとしている。
また、国と州の立法権が分かれている連邦制に近い道州制をめざすとの立場から、国が道州や基礎自治体の事務について法律を定める場合は最小限の内容にとどめ、できる限り道州の独自の政策判断に委ねる。国の法律の内容を道州が変更できる「上書き」も認める。
道州の税財政制度は、国の財源に依存せず、自立的で安定して、偏りの少ない地方税を中心とした体系をめざす。主要な国税をまとめて移譲するなど税制の抜本的改革の必要性を指摘している。