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◆指導者の条件-新台湾の行方と日本-李登輝元総統講演




 三月二十二日、台湾総統選挙で国民党の馬英九氏が民進党の謝長廷氏を破って、国民党政権が誕生した。外省人でかねてより反日的言動が目立った馬新総統は、今後どのような舵取りをするのか。台湾はどこに向かうのか――日本会議地方議員連盟台湾視察団(団長/小礒明都
議)は、五月二十日の新総統就任式から間もない同二十七日、李登輝元総統を表敬訪問した。元総統は何を語ったのか。以下は李登輝元総統の講演の抄録である。


■国家興隆の三つの条件


 おそらく歴史的に見て、日台関係が今ほど密接にならねばならない時期はなかったと私は思います。

 皆さんには、誇りある国づくりを目指してさまざまな運動を繰り広げていると伺っています。一つの国が発展していくか、没落していくか、ということは、次の三つのファクターによって決まると、京都大学の中西輝政教授は言っています。

 第一に国としての長期目標があるかどうか。

 第二に国民が団結しているかどうか。

 第三に指導者にリーダーシップがあるかどうかです。

 戦後の日本は経済は発展したが、国を忘れてしまった。国がもう一度我々の努力する目標となるようにしていかなければいけません。「私」ではなく、国家社会をどう個人の中心とすべきか、ということです。

 その意味では教育は重要です。私自身、振り返ってみても、李登輝をしてこのような道を歩ませたのは日本の教育のお蔭だと思います。私は日本の教育、中華民国の教育、アメリカの教育を受けてきましたが、李登輝という人間の自己形成において、結局残ったのは日本の教育でした。人間としてのあるべき姿を示してくれたのです。

 そのように私と切り離すことのできない日本を昨年訪問し、戦後初めて東京に立ち寄り、そして「奥の細道」を歩いたことはとてもうれしいことでした。

■台湾人は、まだ国を作るまでの力を持っていない

 先の台湾総統選ではっきりしたことは、台湾人は、まだ国を作るまでの力を持っていないということでした。一九八八年に台湾の民主化が始まり、二〇〇〇年に本省人が政権を握った。ところが、汚職と無能さで何もできなかった。今回国民党に政権を取られたということはそういうことでしょう。道徳と宗教と伝統、これが入らなければ国は作れない。

 昨年、日本訪問時に靖國神社に参拝しましたが、そのときに作家の曽野綾子さんが同行してくださいました。曽野さんはアフリカなど発展途上国を支援して学校を作ったりするなど世界中を歩いていますが、その経験から曽野さんは次のように言いました、「奴隷になった人には建国はできません」。つまりは冒頭に紹介した三つの条件―国家の長期目標、国民の団結心、指導者のリーダーシップがないところでは国を興すことはできない。


 団結心は、アイデンティティと言っていいでしょう。台湾語では「認同」と書きます。これについては台湾でもある程度は進んだと思いますが、指導者のリーダーシップは欠けていました。結局、汚職をしたり個人的な利益ばかり求めているような政権には人々は投票しないということです。

 このリーダーシップの問題は日本もクリアできていないのではないでしょうか。

 先の中華人民共和国の胡錦濤国家主席の訪日ですが、いかに引っ張り込んで日本の利益になるようにもっていくか、ということが考えられなくてはならなかったのに、日本政府は何の手も打たなかったのではないですか。日本には中国の指導者に対抗できる人材はいないのでしょうか。

 日本は教育基本法を改正しましたが、次は憲法改正でしょう。でも目前の大事は、強い内閣を作り上げることではないでしょうか。安倍前首相は、国家安全保障会議を作ろうとしました。これは一刻も早く実現させなければなりません。

 例えば日本の中国政策は外務省のいわゆるチャイナスクールによって左右され、およそ外交の体をなしていない。これでは、刻一刻と変化していく国際情勢には対応できない。


■馬英九新総統は日本を知らない

 今年は、各国で重要な選挙が行われ、いよいよ来たる二〇〇九年からは、新しい政権が世界のあちこちで本格的に始動する。我々にとって重要なのは、二〇〇九年以後における西太平洋地域の主導権を誰が握るか、ということです。中共か、日本か、アメリカか。

 台湾の持つ価値とはシーレーンにほかなりません。中国はいついかなるときでも台湾を取ろうと考えています。一方、日本はこの台湾を中心とするシーレーンを本気で守ろうとの姿勢がはっきりしない。

 いまや軍事はミサイル、人工衛星、潜水艦の時代です。日本はこれに対して備えは十分なのか。戦略的備えと政治的リーダーシップをしっかりとってほしい。

 これからの台湾はどうなるかという問題ですが、皆さんが一番心配しているのは、国民党の馬英九さんが勝って、民進党の謝長廷さんが負けた。一体これはどういうことかということだと思います。馬英九さんは日本のことを知らないのです。

 だから日本のことを余計に知らせる必要があります。馬さんが当選後、私のところに来たときに私はこう言いました。「当選おめでとう。ところで、あなたは田舎で九十九日のロングステイをやった。人民の声を聞いて自分の考え方を示したのはよかった。

 そして、あなたはハーバードを出たからアメリカはよく知っている。でも日本を知らない。日本のことなら私に聞きなさい。なんでも教えてあげるから」と。ですから、皆さんにも彼を「知日派」にさせる交流を活発に行って頂きたい。

 国民党は国会の四分の三の議席を取り、総統にもなったからまた独裁政治に戻るだろうといろんな人が言っていました。でも、皆さん、私は国民党の主席だったんですよ。国会も四分の三を占めていた。その李登輝がなぜ台湾の民主化をやれたか。

 それは、その主席という地位、四分の三の数という力を利用して台湾の民主化を至急やらなければならないという信念があったからです。一方で、総統として出発した当初は最悪の条件下にありました。

 蒋経国総統が亡くなって法律的に副総統の私が総統に昇格したわけですが、私には人材もお金も何もなかった。国民党は軍隊も力をもっていたし、非改選の万年議員もいた。さらには、蒋介石未亡人の宋美麗氏が国民党に対してまだ非常なパワーをもっており、党員に私を妨害するよう命じたりしていました。

指導者の条件については、私の『最高指導者の条件』(PHP刊)という本に詳しく書いておりますが、指導者には、まず、哲学がなければなりません。哲学には信仰が必要で、信仰において初めて信念が出てくる。信念があれば使命感が発揮されます。

  次に、指導者は「公」のためにあるという自覚が必要です。公儀というものが大事なのであって、権力はそのための手段にすぎない。よって権力にしがみついてはいけない。公儀のためには権力を放棄する潔さも必要。

 私はこういう考えで民主改革を推し進めました。そういう指導者の条件が馬英九さんにどれだけあるか、見守りたいと思います。


■台湾は二千三百万人の人民のもの


 陳水扁前総統は「台湾」の名義で国連に加盟しようとし、馬さんは「中華民国」という名義で国連に復帰しようとした。これに対してアメリカが、「台湾も中華民国も国ではない」と言ったことは残念だったけれども、実は新聞があまり書かない重要なことをアメリカは言った。

 中華人民共和国が国連に対して「台湾は中華人民共和国の一部分なり」と主張したのに対し、アメリカは「台湾は中華人民共和国のものではない」とはっきり言ったのです。

 これが今回の総統選挙で国際的に一番大事な問題だった。台湾は誰のものだ? 台湾は二千三百万人の人民のものだ、それができるかどうか、という問題が将来に残された。

 台湾を真に台湾の人民のものとするために、我々は、「国家の正常化」を為さなければならない。その中身は何かというと、一つは我々の憲法を持つことです。未だにモンゴルまでわが国の領土だと書いているような中華民国憲法を改めて、我々台湾人の憲法を作ることです。

 もう一つは正名運動です。日本の法務省は、日本に入国する台湾人を中国人のように扱っている。我々は台湾人であって中国人ではない。そのことを内外に対してきちんとさせなければならない。憲法改正と正名運動―これが台湾が「一つの中国」から解放され、同時に大陸由来の「中国の法統」に終止符を打つ道なのです。


■私は「私でない私」


 私は青年時代に二つの問題について問い続けていました。一つは「死」について、そしてもう一つは「自我」についてです。いわゆる「死」とは肉体的な死亡のみを指すのではなく、観念上の自我の否定も含まれます。

 マルティン・ハイデッガーはニーチェの研究で記した大著の中で、「ニーチェは生の本質は自己保存(生存競争)にあるのではなく、自身を超えた境地へ高めることで生の本質を見出すことができると考えた。それは生を高めることを担い、促進し、駆り立てるのである」と述べています。

 これまで、ダーウィンの進化論の影響により、生命の最重要課題は自己の保存だと考えられてきました。これについて、ハイデッガーは生を高めることが生の本質であると。生きるとは、現在の自分をもうちょっと高い精神的な何かにもっていくことです。

 私は命の旅の中で、常に明確な目標意識を持ち、更にその目標に向かって前進してきましたが、様々な人生体験を経て、私はついに「私ではない私」という人生の正しい意味を悟り、これはまた新時代の台湾人にとっての誠の意義でもありました。

 私は「私でない私」。いまの日本人にとっては、「私」は、「日本人である私」というふうに皆さんはならなくてはならない。新約聖書の中のパウロの言葉に「私の心の中にあるのは私ではなく、イエス・キリストは私の中にある、私はイエス・キリストを心の中に持つ」とあります。

 私は私でない私。私は台湾というもののために存在している私である。「あなたは奥さんが大事ですか。台湾が大事ですか」と聞かれたことがあります。私は「家内よりも台湾を一番愛しています。台湾が一番大事です」と答えました。

 以上、私が政治に携わる中で、また人生で体得したささやかな考えです。皆さんの参考になれば幸いです。
by sakura4987 | 2008-06-24 13:03

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