◆韓国反政府デモ 過激化、新聞社を襲撃
(産経 2008/6/28)
ソウル市内では27日も米国産牛肉輸入に反対する抗議集会が開かれ、数万人が参加した(ロイター)
ソウルの中心街で1カ月以上にわたって続いている米国産牛肉輸入反対の反政府デモが、機動隊に対する暴力的攻撃や新聞社への襲撃など過激化している。大統領官邸や政府庁舎などが近い韓国の中心ともいうべき光化門交差点付近は連日、連夜、無秩序な過激デモでマヒ状態が続いている。
韓国政府は「不法デモには断固対処」というが、事態はほとんどデモのなすがままだ。保守派を中心に秩序回復を求める世論が高まりつつあるものの、牛肉問題で「反政府ロウソクデモ」を支援しあおってきたテレビが依然、デモ支持の報道を続けており、沈静化の兆しが見えない。
経済界などでは「政情不安を印象付け対外的な国家信用度を落とすもの」として事態を憂慮し、公権力による秩序回復を強く求めている。
最近のデモは一般市民が減り、労組や学生、政党、各種団体など左派や革新系が主導する「専門的な反政府組織、活動家が目立つ」(警備当局)。数千人、数百人規模で深夜から未明にかけて都心の路上を占拠し、警備の機動隊を襲撃、警備車を破壊し機動隊員に集団暴行を加えている。
26日夜は光化門近くの朝鮮日報や東亜日報まで襲われ、玄関のガラスドアを破壊し、外壁にハシゴをかけて新聞社の社名の文字板まではがし投げ捨てるなどやり放題だ。保守系の両紙がデモに批判的というのが理由だが、デモ隊は朝鮮日報の関連企業で日本人観光客も多いコリアナホテルにまで乱入している。
デモ側は「大統領官邸へ進撃」を叫び、光化門交差点で阻止線を張る機動隊と毎晩のように衝突を繰り返している。“破壊”された警備車は数十台に上り負傷者も増えつつある。
近年の民主化や左派・革新系政権下で催涙弾を使えなくなっている警備陣は時折、放水や消火器でデモの攻撃に対抗しているが、テレビ報道はこれさえ「過剰鎮圧」と非難している。新聞社襲撃についても、テレビや他の新聞はさして非難の報道をしていない。
政府はデモが当初、牛肉問題をテーマに一般市民を含む市民運動風の「ロウソクデモ」で始まったため強い規制を控え、本来は不法の路上占拠も黙認してきた。この“柔軟姿勢”がデモを勢いづけたかたちだ。ここにきて強く出るべきかどうか政府には依然、迷いがあるようだ。