◆【話の肖像画】人生、これ修行(4)南無の会会長 松原泰道さん
(産経 2009/2/20)
■「心の杖言葉」を持とう
--人間、「感動することが一番大事」というお話がありましたね
松原 俳人の松尾芭蕉に、「よく見れば 薺(なずな)花咲く垣根かな」という句があります。ナズナはペンペン草、雑草で誰も見ていないが、垣根の隅っこでも一生懸命に咲いていることに芭蕉が感動したのです。
--どんなことも、「あたりまえ」とみていたら感動は得られません
松原 (100歳を超えた)私はヘルパーさんにあおむけにして寝かせてもらってます。朝、起きると、「ああ、今日も生きさせてもらっている」と感動しますね。そして、「何か人の役に立つことができるのではないか」という希望がわいてきます。
ただし、その希望をどう実現するか、というためには工夫が必要ですよ。感動、希望、工夫、私はこれを「プラスの3K」と呼びます。
--よく使われる(やりたくない仕事の)3Kではなく、プラスの3K」ですか
松原 そうです。「プラスの3K」もそうですが、真剣に生きたいと思う方なら、このような「心の杖(つえ)言葉」、つまり、自分の心の支えになる言葉を持つことをおすすめしたいですね。
--同感です
松原 「扶(たす)けては 断橋(だんきょう)の水を過ぎ、伴っては 無月の村に帰る」という禅の言葉があります。
断橋とは橋が落ちていることですが、杖があれば、人間を支えて、水の中でも(杖をついて)渡ることができる。また、闇夜でも杖があれば帰ることができる。杖にはそういう働きがあります。だから、今の“闇夜のような世の中”では、「心の杖言葉」をお持ちください、と言っています。
--今日は、ご高僧にお会いするというので大変緊張していました
松原 私は高僧なんかじゃないですよ(苦笑)。
ただ、本当にお経の読める坊さんになりたい。悲しんでいる遺族の心を少しでも明るくすることが、お経をよむことだと気がついたのです。それが私の仕事の一番の元です。