◆【次代への名言】2月23日・新名丈夫
(産経 2009/2/23)
■「敵が飛行機で攻めに来るのに竹槍(たけやり)をもつては戦ひ得ないのだ」(新名丈夫(しんみょう・たけお)・毎日新聞海軍省担当記者)
昭和19(1944)年のきょう、毎日新聞の朝刊1面に「竹槍では間に合はぬ 飛行機だ、海洋航空機だ」という大見出しの記事が掲載された。
冒頭はその一節。「われらの血を以(もっ)てわれらが光輝ある歴史と伝統の皇土を守るべき秋(とき)は来たのだ」と結ばれ、戦意高揚のかたちを取っていたが、新名の回想によると、彼と編集トップの思いは同じだった。「負けいくさになっている」という事実を伝える。同じ1面の社説「今ぞ深思の時である」は「最後の勝利を獲得する確信はあるのか。わが国にはそれだけの余裕があるのか」と問うている。
海軍省担当のベテランとして例外的に無検閲の新名だから書けた記事だった。無数の読者、軍関係者からも称賛の声が寄せられたが、独裁体制にあった首相、東條英機は激怒した。数日後、37歳の新名に召集令状が届く。
東條は当初、「毎日を廃刊にせよ」とも命令したという。騒然とする編集局で一人腕組みする新名を救ったのは、ふだんは地味な仕事をしている「老社員」がかけた一言だった。「言論機関がその使命を果たせないなら、社はつぶれてもいいです。いざとなればどこでも行って働きます。どうか元気を出してください」

