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◆【産経抄】 (産経 2009/2/26)




 老作家の杉圭介が杏子に出会ったのは、60年以上も前のことだ。たちまち恋に陥った圭介は、自身に問いかけた。彼女を射(う)とうとする者があったら、「彼女を守って銃口の前に立てるか」と。「立てる」と自信をもって答えた。

 結婚してからも、折々に同じことを問いかけたものだ。「今また杉は銃口の前に立っている。銃にこめられた弾丸はアルツハイマー型認知症だ」。平成14年に89歳の青山光二が発表した『吾妹子(わぎもこ)哀し』は、妻を介護する日々を描いて、「恋愛の窮極のかたち」と評された。翌年、この作品で川端康成文学賞を受賞する。

 杏子は来客に、自分のカプセル剤を菓子と思い込んで、もてなそうとする。下駄箱に化粧品を並べ、食器棚に靴を詰め込む。「どこですか、ここ」と自宅で杏子に聞かれるたびに、圭介の視界は涙で曇った。青山の実体験に違いない。やがて妻は特別老人ホームに入居し、青山は95歳で世を去った。

 きのうの小紙社会面(東京版)は、大田区に住む87歳の男性による老老介護の悲しい結末を伝えていた。認知症の妻(80)と、知的障害の息子(51)を介護していた男性は今年1月、布団のなかで息絶えた。2人はその死に気づかず、知人が遺体を見つけるまで1週間以上がたっていた。

 残された家族は、近所の人たちの助けを借りて、今は笑顔を取り戻しているという。少子高齢化の影響で、老老介護は増加の一途をたどっている。識者は「地域の支援が必要」と訴える。

 そういえば、『死霊』の作家、埴谷雄高の面倒を、隣の「おばあちゃん」が親切心から15年間にわたって見た例もある。しかしさまざまな事情で、「おばあちゃんの手を握って死にたい」という、埴谷の願いはかなえられなかった。
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by sakura4987 | 2009-03-04 12:06

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