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◆【正論】「現在進行形の努力」と保守



              東洋学園大学准教授・櫻田淳

 (産経 2009/2/26)


 ≪■「老舗」であるための条件≫

 現下の世界規模の経済危機が日本の経済社会に未曾有の試練を与えているのは、あらためて指摘するまでもない。ところで、日本の経済社会の特色は、創業以来、少なくとも百年、二百年の時を刻んだ「老舗企業」が多いということである。たとえば、東京・日本橋辺りの街を歩けば、そうしたものは、当然のように目に入る。驚くべきは、大阪には、飛鳥時代以来、千数百年も続いている企業が存在し、それは宮大工から出発した建築会社である。

 こうした「老舗企業」が日本において続くのは、何故(なぜ)であろうか。それは、「昔、立派であったから…」ということだけで存続しているわけでもないし、その「過去の遺産」だけで食いつないでいるわけでもない。

 それは、それぞれの時代の当主を中心とした多くの人々の「現在進行形の努力」の集積である。

 それぞれの世代が、「周囲の評判を落とさぬように…」ということを心がけて、日々、努力を続け、その努力が子々孫々にまで受け継がれてこそ、「老舗」が「老舗」となっているのである。

 それは、敢(あ)えていえば、「現在進行形の努力」のリレーである。逆にいえば、どこかの時点で、「過去の栄光」に胡坐(あぐら)をかいて驕(おご)りを生じさせたり、それぞれの時代の要請に向き合わない振る舞いをしたりする人々がいれば、その「現在進行形の努力」のリレーは、確実に途切れることになる。「老舗」が「老舗」であるための条件とは、時代の変遷に生真面目(きまじめ)に向き合っていく「緊張感」と「ダイナミズム」であるということになる。

 ≪■緊張感とダイナミズムと≫

 筆者は、日本の「保守主義」の精神を最も鮮やかに体現しているのは、こうした幾多の「老舗会社」ではないかと考えている。そして、筆者の考える「保守主義」の本質とは、そうした「緊張感」と「ダイナミズム」に他ならないのである。

 然(しか)るに、現在の日本では、政治家の世界であれ、知識人を含むメディアの世界であれ、この「現在進行形の努力」を続けるということに、どこまで生真面目な考慮が払われているであろうか。たとえば、今次通常国会序盤の焦点は、第二次補正予算案における「定額給付金」の扱いであったけれども、減税を公共投資に先行させる施策は、景気刺激の観点からは決して誤っていない。

 ただし、そうであるならば、本来、議論されなければならないのは、「総額2兆円という規模で本当に効果が上がるのか」ということであり、「何故、定額減税ではなく定率減税を考慮しないのか」であったはずである。こうした議論が浮かび上がらないままに、「定額給付金は是か非か」という二者択一の硬直した議論に終始し、「富裕層は受け取るべきか否か」といった瑣末(さまつ)な議論が示されていたのは、そうした生真面目さに疑問符を付すものであろう。また、知識人の世界でも、「現在進行形の努力」とは乖離(かいり)した「観念の遊戯」としか思えない議論が続けられたりしている。

 ≪■硬直・定型が支配する政界≫

 このように、「老舗企業」を始めとして「実践」を旨とする人々は、「現在進行形の努力」を必死に進めているけれども、特に政治家や知識人の仕事から、そうした「現在進行形の努力」の形跡が浮かび上がってこないのは、何故なのか。それこそが、日本における「弱さ」を示す一つの事例であろう。

 平成の御代も21年目を迎えた。振り返れば、明治の御代の21年目は、翌年の大日本帝国憲法発布を控え、「近代国家・日本」の体裁が整えられようとした時節であった。昭和の御代の21年目は、そうした帝国の枠組みが壊れ、日本の「新生」への模索が始まろうとした時節であった。それならば、現在の日本の人々は、平成の御代の21年目をどのようなものとして位置付けるのであろうか。

 現下の経済危機の震源地となった米国には、バラク・H・オバマという異例の指導者が登場した。

 米国が高々、二百数十年の歴史しか持たないことを揶揄(やゆ)する向きは、あるかもしれないけれども、こうした異例の指導者が登場し、それを多くの米国国民が支持するという風景は、現状への切迫した意識に裏付けられた米国における「現在進行形の努力」の一端を垣間見せている。片や、日本の人々が世界に示すべき「現在進行形の努力」の中身は、何なのか。

 「硬直性」、「定型性」の色合いを持つ一切の事柄は、こうした「現在進行形の努力」には支障となる。そして、それは、「保守主義」の精神とも無縁のものである。
by sakura4987 | 2009-03-04 12:16

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