◆【次代への名言】4月4日 ラフカディオ・ハーン=小泉八雲
(産経 2009/4/4)
■「自然と人生を楽しみ、愛すという点で、日本人の魂は、古代ギリシャ人の精神と不思議に似ているところがある」(ラフカディオ・ハーン=小泉八雲)
「その朝、わたしが最高に嬉しく思った印象は、日本人がわたしを見つめるまなざしが、驚くほどやさしかったことだろう」-。英国人作家、ハーン(のちに帰化)はエッセー『極東初日』にそう記している。明治23(1890)年のきょう、彼を乗せた汽船が横浜に到着した。40歳の初来日だった。
ハーンの心をとらえたのは日本人の微笑だった。仏頂面(ぶっちょうづら)の英国人とは対照的。また、フランス人の冷笑とは質を異にする、最も気持ちのよい顔-笑顔をいつも、悲しいときでさえたたえている。西洋人にとって不思議に映るこの微笑は、実は日本人の精神の豊かさ、さらには「日本の文明は、物質的には発展途上国だが、それだけ道徳面では、西洋文明よりはるかに進んでいる」ということの象徴-。当時の彼が至った結論である。
だが、ハーンはのちに、急速な欧米化によって「微笑」が忘れ去られようとしている、と感じるようになる。彼はつづる。「西洋人が古代ギリシャ文明を愛惜するように、日本の若い世代が過ぎ去った日本を愛惜するときがくるだろう。そのさい、最大の驚きは、昔の神々の表情であろう。なぜならその微笑は、かつての自分たちの微笑だったのだから」

