◆中国に兵器引き渡し文書発見なら日本の処理義務なし 担当室長
旧日本軍が中国に遺棄したとされる遺棄化学兵器問題で、内閣府の高松明遺棄化学兵器処理担当室長は二十四日の衆院内閣委員会で、「正式に中国やソ連に化学兵器が引き渡されたという文書が発見されれば基本的な枠組みが変わってくる」と答弁した。
旧日本軍の武装解除に関する資料が発見された場合、化学兵器禁止条約上、日本政府が負う処理義務が消滅する可能性に政府として初めて言及したものだ。
条約は「遺棄化学兵器」について他国の領域に「同意を得ることなく遺棄した化学兵器」(第二条)と定義している。
政府は従来、「旧日本軍が残置することに中国側が同意していたことを示す明らかな証拠がない限りわが国としては廃棄する義務を負う」(平成十七年七月の参院外交防衛委員会)と答弁していた。高松室長の答弁は義務がない場合の条件を示しており、従来の政府見解から一歩踏み込んだ形だ。
民主党の泉健太衆院議員が「武器の引き渡し目録などの資料が出てきた場合、(処理費用の)請求が中国やロシアに及ぶことはあるか」と質問したことに対する答弁。
高松室長は「政府としては現在、中国、ソ連の同意の下に引き渡されたことを確実に裏付ける証拠、資料があるとは承知していない」と条約上の処理義務がなお存在するとの考えを改めて示した。
しかし、山谷えり子内閣府政務官は同委員会で、資料の調査について「内閣府の処理担当室としても考えていきたい」と検討する可能性を示唆した。
日本政府は平成十二年以降、九百七十億円を投じて中国国内の化学兵器の発掘、回収事業を実施。事業総額は二千億円以上に上るとみられている。